第38話 効率
さて、今回のダンジョン攻略からは一つ変更点がある。
今まで、夜になるとテントを張って野営をしていたのだが、休んでいる間に移動したほうが効率がいいのではないかという話になった。
そういう訳で、俺は魔石式の移送車を真・創造魔法で作り上げていた。
1部隊が車で休んでいる間、残りの部隊がダンジョン攻略を進める。今のところ、1階層に6時間くらいかかるので、休憩などを挟んでいれば睡眠時間は7時間ほどとれる計算になる。
最初は車の中でなかなか寝付けないという人も多かったが、2日目にはすっかり慣れ外の戦闘音も気にせずぐっすり寝られるようになっていた。
そうして、ダンジョン攻略を進めていくのはやはり効率が良かった。
ダンジョンに潜り始めて7日後、俺たちはボス階層の手前までたどり着いたのだった。
「よし、もうすぐボス戦だ。多々良くんの班はちょっと休めなくなってしまうが、このままいっても大丈夫か?」
「大丈夫ですよ。パパっと倒して早く帰りましょう」
帰りはモンスターを倒さないでまっすぐ地上に向かう、といってもやはり丸1日近くは掛かってしまう。
ボス戦が終わったらぐっすり休ませてもらおう。
「ふあぁ……わたし、もう眠たい……」
「最後のひと踏ん張りだから頑張ってくれよー」
沙織が目をこすりながら欠伸をしている。俺は苦笑いを浮かべつつも沙織に戦闘の準備をさせた。
「各部隊の前衛はが先行してくれ。他の隊員はそれに続くように突入し、前衛のサポートだ」
「「了解!」」
◇◇◇
軽い作戦会議を終え、俺たちは階段を下りていく。
ボス階層の入口にたどり着くと、前衛部隊は早速中に突入した。
「突撃!!」
それに続くように俺たち後衛も走って向かう。入口を抜けると、俺の目にもボスが見える。
「うお、でっけえ!!」
木々が鬱蒼と生い茂るフィールドにボスとして現れたのは、リクガメのような見た目をしたモンスターだった。ただ、その大きさがとんでもない。全長50メートルはゆうに超える、超大型モンスターだった。背中には木々が生い茂っており、ちょっとした雑木林のようだった。
「甲羅は堅そうだな……」
ライフルで射撃した俺は、そう呟いた。やはり、一筋縄ではいかないようだ。
「後衛はスナイパーライフルに持ち替えてくれー! ライフルじゃ話にならん」
俺のその指示で、後衛部隊は武器を持ちかえる。
前衛部隊は爆炎魔法や疾風魔法で何とか腹側を出せないかと試行錯誤している。
もちろん、モンスターも黙って攻撃を受けているわけではない。背中の木々がうごめき、太い根っこのようなものが前衛部隊を襲う。
モンスターは想定外に手強い攻撃に警戒したのか、頭を甲羅の中にしまっている。
「うーん、クルッてひっくり返したいんだけどなあ……。あ、そうだ」
俺は空間魔法を発動し、あるものを取り出した。
取り出したのはワインを入れるような酒樽ほどの大きさがある魔法具だ。非常にコストパフォーマンスが悪い魔法具なのでなかなか活躍の場が少ないのだが、今はこいつが輝くと判断した。
「おーい井田!! こいつを持って行ってくれー!」
前線で戦う井田に声を掛けると、すぐに真横に転移してくる。相変わらず呼吸するように転移魔法を使うよな……。
「なるほど、これであいつをひっくり返せばいいんですね?」
俺のやりたいことが分かったのか、井田はそう言った。話が早くて助かる。
「威力が高いから、準備が出来たら前衛を退避させてくれ」
「了解しました」
井田はそう言い、大型爆弾を持って最前線に戻っていった。
その間、俺は後衛部隊の中で壁を作れる奴に声を掛けていく。爆風除けの分厚い壁を作ってもらいたかったのだ。
そうしてすぐに準備が整い、モンスターの周りからは隊員たちが離れる。
井田は大型爆弾を起動させ安全な場所に退避した。
起動して5秒ほど経つと、無事大型爆弾は爆発する。
ドオオオオオオオオオオオオォォォォォォン!!
大きな爆発音とともに、周囲には爆風が吹き荒れる。周辺にある木々は簡単になぎ倒されていることから、威力の高さが窺える。
『ギャアアアアアアァァァァァアアス!!!』
モンスターは爆風に巻き込まれ、予想通りひっくり返った。
そこからは俺たちの一方的な攻撃になった。
結局5分もかからず、俺たちはモンスターを倒してしてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます