夜の日のアンブレラ
七星北斗(化物)
1. 夜を楽しもう
夜は、傘を差したくなる。
不安、寂しさ、淀み、日陰者の時間。
傘を差す少女、車道の白線を歩く。両腕を水平に広げ、片手には、夜とは不釣り合いな白い傘を持つ。
黒髪が、夜の暗さによく合う。
唐揚げ棒を片手に、ムシャムシャと頬張る。
「ウマーっ」
先ほど、コンビニで調達したのものだ。
唐揚げを食べ終わると、袋をがさがさと漁る。そして、取り出したアイスをペロペロ舐める。
私は、夜の魔女。ギリギリ夜の中でしか生きられない。
彼女たちは、この時間帯こそ、外に出ることができる夢の時間。
チリチリと鼻につく匂いがした。どこかで火事でも起きているのだろう。
「まーた暴れてるのか」
この空気の重さは、火の使い?
夜物は、夜に現れて人に害をなす存在。
火の使いは、夜物の危険度をA~Eにランク分けした場合、Dに該当する。
「嫌だなー。今から公園で、弁当を食べるつもりだったのに」
はぁー、しょうがないか。被害が増えても、目覚めが悪い。
「行くか」
夜であるのに、この明るさ。常人であれば、猛毒な空気や熱。
「地上を地獄へ落とす。消えぬ炎で灰になれ」
火の使いの正体は、白い影のような物。当たり一面は、白黄色で包まれていた。
「神様に伝えといてよ。この世界は、絶対に地獄へ落とさせない」
「魔女風情が何を言う」
「私はさ、この世界が嫌いじゃないんだ」
「神に呪われ、影へと堕ちた。人間とも呼べぬ、哀れな子よ」
「哀れか…そうかもね」
「せめてもの情けだ、痛みなく殺してやろう」
「やーなこった。せーいっぱい生きて、その先で私は死ぬんだ」
「なるほど、これ以上の言は不要か」
火の使いの高密度な炎が、魔女に覆うように包んでいく。
「世界の理を捻じ曲げる力、ストレング。原初の魔法、アダルトチルドレン」
虚空から、小さな子供たちが現れる。魔女の片腕が、その子供の胸を貫いた。
その瞬間、火の使いの核が砕かれる。
「それがお前の魔法か。魔女らしい、醜いものだ。しかし不思議と美しく見える」
「えーっと、君は核いくつあるんだっけ?」
「答えるわけがなかろう」
「そりゃそうだ」
魔女は、次々に子供たちを殺していく。
炎を躱しながら、核を次々に砕く。
「物足りないな」
そして気がつくと、火の使いは消えていた。
そろそろ帰るかな。お風呂入りたいし、日が昇っちゃう。
お、ラッキー。弁当温かくなってるじゃん。
飴棒を口に含み、片手に傘、もう一方の手にコンビニ袋を握り。
魔女は、鼻唄を歌いながら帰路につく。
「ふわぁー、眠い」
今日も、夜は楽しかった。
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