紙切れ

世の中、金。

いつから俺は「お」金と言わなくなったのか、

そんなことすらもわからないのに。

俺は、ただの紙切れが惜しくてしょうがない。

この箱を買う為だけに無駄になる、

信用でしか成り立たない紙が、どうしようもなく惜しい。

あぁ、そうか。

紙切れがあるのが悪いんだ。

小銭があるから苦しいんだ。

そう思う。そうとしか思わない。


「東京都府中市日鋼町1-19」


日銀そこを目指して俺は歩く。

ガソリンまみれの重ったるいセーターと道端に落ちていたライターを手に取って。


道行く人は今日も紙切れに夢中だ。

紙切れのに依存し、紙切れに依存されている。

なんて哀れで愚かなのだろうか。

たかが紙切れ。そんなことにも不平等な等価交換が世界中で起こっている。


あ、しくった。

日銀だけじゃあ意味がないじゃないか。

まぁ仕方のないことだろう。

一人で全てを背負う背中を俺は持ち合わせてはいない。


警備員が不審そうに俺を見る。

長年の目で培ってきた目は伊達ではないようだ。


残念。特攻しか手はないのかもしれない。


取り合えず門を上り、

真ん中程に来たところでピストル音がなる。

チャカ抜いても意味なんてない。所詮サツのだから。

俺は見向きもせずに建物にセーターを投げ、

ライターを元に戻した。


重油と火薬ゆめのつまったセーターは大きく燃え、

俺をも、消した。


ゆけ火柱よ。

私という人間ねんりょうを糧に燃えゆけ。


人生に意味など非ず。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

殺家 鷹簸 @tacahishi-13

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る