許彦他  盧玄伝に沸く崔浩

魏書 46 巻から、二名紹介する。


許彦きょげん、字は道謨どうも。幼名は嘉屯かとん高陽郡こうようぐん新城県しんじょうけんの人だ。祖父は許茂きょも慕容氏ぼようし高陽太守こうようたいしゅであった。許彥は幼い頃貧しい中讀書を愛し、やがて僧侶の法叡ほうえいよりえきを学んだ。拓跋燾たくばつとうが即位して間もなくの頃に抜擢を受け、その予見がしばしば的中したことから拓跋燾のそばに置かれ、その謀議に参与した。442 年に死亡。宣公せんこうと諡された。


李崇りすう范陽はんよう人である。袓父の李產りさん、父の李績りせきはともに慕容氏ぼようしにて名を知られた。李崇りすう馮跋ふうばつのもとで吏部尚書りぶしょうしょ石城太守せきじょうたいしゅとなった。432 年頃に拓跋燾が和龍かりゅうに攻めのぼった際、李崇は十あまりの郡の官吏民衆を引き連れ、帰順。拓跋燾は大いに李崇を礼遇し、「李公」と呼び、平西將軍へいせいしょうぐん北幽州刺史きたゆうしゅうしし固安侯こあんこうとされた。



魏書 47 巻からは、一名。


盧玄ろげん、字は子真ししん范陽郡はんようぐん涿県たくけんの人だ。曾袓父は盧諶ろしんしん司空しくう劉琨りゅうこん從事中郎じゅうじちゅうろうであった。袓父の盧偃ろえん、父の盧邈ろぼうはともに慕容氏に仕えて郡太守ぐんたいしゅとなり、儒家としての名声にあずかった。431 年、崔浩さいこうにより各地の優れた儒家が招聘された際、盧玄はその筆頭とされ、中書博士ちゅうしょはくしに任じられた。

なお崔浩さいこうは、盧玄の姉の夫である。盧玄ともしばしば語らい合っていたのだが、そのたびに嘆息しながら言っている。

「盧玄くんと向かい合っていると、古の良き時代への想いがますます募るのだ。」

盧玄はいにしえの偉人たちにも引けを取らない、というわけだ。

崔浩は北魏宮廷内に盛大に漢人盛族をねじ込みたい、と考えていた。このため盧玄は崔浩に語っている。

「そうした大幅な改革は、行うにしても時宜が求められましょう。いま、どれほどの方がその改革を喜ぶのでしょうか? どうか重ねての熟慮をお願いいたします」

崔浩はこの言葉にまともな返答も出来なかったのだが、結局は受け入れることもなかった。崔浩の処断は、この企図もまた大いに関与していたという。

盧玄は後に寧朔將軍ねいさくしょうぐん兼散騎常侍けんさんきじょうじとして劉宋の劉義隆りゅうぎりゅうに使者として遣わされた。劉義隆は会見し、言葉を交わすことしばし、やがて嘆息すると「中郎どのは、まことそなたの曾袓父であらせられるのだな」と語った。

北魏に帰還後、病を得て死亡した。




許彦,字道謨,小字嘉屯,高陽新城人也。祖茂,慕容氏高陽太守。彥少孤貧,好讀書,後從沙門法叡受易。世祖初,被徵,以卜筮頻驗,遂在左右,參與謀議。真君二年,卒。諡曰宣公。

李訢,字元盛,小名真奴,范陽人也。曾袓產,產子績,二世知名於慕容氏。父崇,馮跋吏部尚書、石城太守。延和初,車駕至和龍,崇率十餘郡歸降。世袓甚禮之,呼曰「李公」,以崇為平西將軍、北幽州刺史、固安侯。卒。

(魏書46-1)


盧玄,字子真,范陽涿人也。曾袓諶,晉司空劉琨從事中郎。袓偃,父邈,並仕慕容氏為郡太守,皆以儒雅稱。神䴥四年,辟召儒儁,以玄為首,授中書博士。司徒崔浩,玄之外兄,每與玄言,輒歎曰:「對子真,使我懷古之情更深。」浩大欲齊整人倫,分明姓族。玄勸之曰:「夫創制立事,各有其時,樂為此者,詎幾人也?宜其三思。」浩當時雖無異言,竟不納,浩敗頗亦由此。後轉寧朔將軍、兼散騎常侍,使劉義隆。義隆見之,與語良久,歎曰:「中郎,卿曾袓也。」既還,病卒。

(魏書47-1)




許彦たちはおまけ扱いにならざるを得ないんだ……ごめんよぉ……なら盧玄単品にしろって話だけど、それにしたって文字数少なすぎるから一緒くたにせざるを得ないわけでさぁ……。


というわけで、盧玄ですよ。面白い存在感の人ですね。この作品が崔浩を「おまけ扱いのメイン」でなく「メイン」とするなら、間違いなく彼も重く扱われます。けどそうはならなかった。ならなかったんだよロック。


劉義隆による「中郎,卿曾袓也。」は、それだけ盧諶の文才が劉宋でも轟いていた、ということなのでしょう。世説新語マン的には「オメーの父ちゃん(盧志ろし陸機りくきに殴られてたじゃね〜か!」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884883338/episodes/1177354054885035476

なんですが。

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