第6話 輝く笑顔
「んー、1階行くぞーっていってもさー。別に面白いとこないんだよな1階って。」
私の隣で太陽はそう言った。
「そうなの?でも私はなんでもいいわ。それに、探検みたいで少し面白いじゃない??」
私は背の高い太陽の顔を覗き込んだ。
太陽は私とは目を合わせず、あさっての方向を見て「そうかー?」と言っている。どうやら空を見ているようだ。
「…空に何かあったの?」
私は太陽が目を合わせてくれないことが気に食わず、頬を膨らませて太陽に声をかける。
すると太陽はハッとしたようにこっちを見て、ゆっくり口を開いた。
「空っていいよなって思って。俺さ、将来宇宙飛行士になりたいんだ。そんで月に行ってうさぎを見る!!!いい夢だろ?」
私は一瞬、『月』という単語が出てきてびっくりしたが、太陽は自分の夢を語っていたようなので少し安心した。
それにしても、太陽が思っている月と実際の月は全く違うので、実際に来た時にガッカリしないか心配だ。兎もそんな可愛い見た目では無いし。
「可愛らしい兎は居ないんじゃないかしら。」
私は月に残っている兎達の顔を思い出した。
毎日あっていた兎でも、暫く会わないと少し寂しくなってしまうものだ。
「可愛くないうさぎは居るってことか?あははっ、俺は可愛いうさぎが見たいんだよー!!」
太陽は大きく口を開いて笑った。やっぱり、太陽には笑顔が似合っている。私はその様子を見て、小さく微笑んだ。
そんなこんなで、1階に着いた。
「んじゃ、端から行きますかーっ」
太陽は腕を頭の後ろで組んで歩き出した。私も急いで後を着いていく。
太陽は廊下の端まで歩いたと思ったら、そこにあった扉を開けて外に出た。
「えぇ!外もあるの?初めて知ったわ!!」
「体育館とかプールはこっちだからな。」
「へぇ……タイイクカンねぇ……。」
初めて聞く単語が出てくる。タイイクカンとは、何をする場所なのだろうか。私は不思議に思い、太陽に尋ねてみた。
「タイイクカンって、何をする場所なの?」
太陽は一瞬驚いた顔をして、でもまた直ぐに元の顔に戻り、私に説明してくれた。
「体育の授業とか、部活とかで使うんだよ。簡単に言えば運動する場所。ってか、かぐやは体育館も知らないなんてどんなお嬢様だよ!w」
「なっ…!私はお嬢様じゃないわ!!タイイクカンだって本当は少し知っていたもの。…少しだけ……。」
太陽は私が必死になって月から来たことを隠そうとしていることに大笑いしていた。お腹を抑えて笑っている。
「あははははっ!!やっぱおもしれぇわ!」
太陽は笑いすぎて目から涙が出ている。
「涙がでているわよ?大丈夫?」
私はそう言いながら、太陽の涙を自分の制服の袖で拭った。
「うおっ…あ、ありがと。」
太陽は一瞬びっくりして、顔を赤らめている。
「涙が出るほど笑わないでちょうだい!!」
私は太陽みたいな笑顔でそう言った。すると、太陽はニコッと笑って「わかったよ」と言った。
私はきっと太陽みたいな輝く笑顔ではないだろうけど、それでも一緒にいると少しだけ自分もその光を分けてもらえる気がした。
月は太陽に恋をする。 懋助零 @momnsuke109
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