第一話 I Know You
「来たな」
「こんにちは」
昨日は夜中でよく見えなかった、黒武の大きさに走は少し萎縮する。
「安心しろ、危険な事はなにも、カゲロウは朝、植物みたいに静かに活動する……そのせいで根絶出来ないんだが……」
「ん?」
「何でもない、行くぞ」
「は、はい」
入り組んだ道を通る黒武の後を走は必死に追う。
黒武の家に着く頃にはすっかり息が上がってしまった。
「俺ん家だ、入れ」
「失礼します」
走は部屋に入り、座る。
「まず、質疑応答といこう。なんでも答えてやる」
黒武が椅子にドカッと座り、椅子を揺らす。
走は少し考えて、質問する。
「黒武さん、あなたについて、詳しく聞かせて下さい」
言いにくいのか、黒武は言葉を選びながら答える。
「俺は文化科学省副大臣兼マットメイク大阪支店店長兼国立白鳥第一高校文学部顧問兼国際……」
「も、もういいです」
黒武の言葉を走は止める。
「そうか他には?」
「カゲロウを倒したあの武器はなんですか?」
「Αphone社製取り付け型小口径弾用小銃最新版」
黒武はポケットから昨日使った銃を取り出し、走に見せる。
「なんでそんなにペラペラ教えるんですか?」
走は黒武の態度が怖くなり聞いた。
その質問に黒武が間髪入れずに答える。
「お前に協力して欲しいんだ」
「協力?」
「ああ、一緒にカゲロウをぶっ飛ばそう、安心しろ、お前と年が近い奴もいるし、すぐ慣れる」
「そんな急に言われたって」
「だーいじょうぶ、ちゃんとトレーニングすれば、それに君のサッカーの腕も上がるんじゃない?」
走は目を丸くする。
「……なんで分かったんですか」
「擦りむいた跡がある、しかも普通の人には付きにくい位置に、なにかスポーツやってないとできない、あと君足速いし、よく周りを見てて、団体競技、サッカーだ」
――昨日だけでこんなに。
「……」
「頼むよ、な、な?」
黒武が走の前で手を合わせてお願いする。
「分かりました」
「そうかそうか、良かった」
「それで、僕はなにをすれば?」
「お、乗り気だな。まずはトレーニング、3日後に実戦だ、お前の運動神経なら、足を引っ張る事はねぇ」
「はい」
走は黒武の勢いに押され、了承してしまった。
「じゃあ早速、武器紹介ターイム」
「はい?」
黒武はベッドの下から箱を取り出し、その中からいろんな物を出す。
「まずこれはさっきも言った、銃だ。次にAphone社製取り付け型電撃短刀、電気がカゲロウの弱点だ、これで止めをさす。後は長いイヤホンと拳の方が良いなら電気グローブもある」
「は、はい」
走はメモを取り、観察する。
――これでどうやって戦うんだろう?
と考えていると玄関のチャイムが鳴った。
「来たか、開いてるぞー」
「誰ですか?」
「顔合わせだ、4人しか来なかったけどな」
玄関からぞろぞろと入ってくる。
「ども、黒武さん!」
「ガキ1人のために俺呼んだの?」
「眠い、あ、デイリーやり忘れた!」
「黒武先輩、食材買ってきました」
「よし! 揃ったな」
黒武がガサっとテーブルの上にあったものを退かして、コンロと鍋を出す。
「え、何をするんですか?」
「タコパだよタコパ、親睦会」
「汚ねぇな」
筋肉質な男が足の踏み場を探しながら言う。
「別に良いだろ、食えりゃあ」
「台所借ります」
「僕も手伝います」
走も手伝おうとするが、黒武に止められる。
「良いんだよ、お前はじっとしてろ」
テキパキと連携の取れた動きでボロボロだった黒武の部屋はすぐにパーティームードに変わった。
「何かすることありますか?」
もう一度、走は手伝おうとするが、今度は全員に止められる。
「「座ってろ」」
「……はい」
「早くしてくれよ~」
黒武がテーブルをドンドン叩く。
「「あんたは手伝え!」」
軽快な会話を交わしながら準備が進み、タコパが始まった。
「君、未成年でしょ、オレンジジュースで良い?」
「はい」
走のコップにオレンジジュースが注がれる。
「じゃあ、乾杯!」
「「カンパーイ」」
「ではでは皆さん! 紹介しよう! これから仲間に加わる、鴉馬走だ! はぁい拍手~」
疎らな拍手が響く。
「無理すんな、黒武」
「よろしくお願いします」
走はペコッと頭を下げる。
「自己紹介ターイム、俺はやったから、俺の隣、織田君」
「分かりました、僕は
幼さが残る見た目に反して走よりも年上であることに、走は驚く。
「部隊?」
「あ、まだ言ってなかったか、俺達の部隊、カゲロウ対策特別部隊だ」
「次は……俺ですね、俺は
雑木は隣の人にまわす。
「俺か、俺は
「次!」
勇我の隣に目を向けると男はテーブルに頭を乗っけて寝ていた。
「寝るなよ」
「起きてください!」
雑木が体を揺らしたりしていると男は目を開き、体を起こす。
「なんですか、起きてますよ」
「イヤイヤ! ゼッッタイ寝てた」
「……僕の番か、僕は
走は笑顔で自分に手を振る寝代に優しそうな印象をもつ。
「よろしくお願いします。その……たくさんの人を助けられる様に頑張ります!」
「お、良い目標じゃん」
「頑張ってね」
「強くなれよ!」
黒武はバシンッと走の背中を叩く。
「よし、そろそろ焼けただろ」
勇我が箸を取り、タコを覗き込む。
「あ、ひっくり返してなかった」
「てめぇ!」
勇我が雑木の襟を掴む。
「だって急に話振るから」
「ははは」
走が笑った。
それに釣られて他の皆も笑った。
「「ハッハッハッハッ!」」
その笑い声は携帯に届いた悲鳴をかき消した。
Αphone 奇想しらす @ShirasuKISOU
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