いつだってきみの味方だよ 🌝

上月くるを

いつだってきみの味方だよ 🌝





 ショッピングサイトのハンバーガー店の窓から、こんもりとした古墳が見える。

 少し前まで全山が薄紅色に覆われていたが、葉桜期を過ぎたいまは、さみどり。


 あの中腹には古代の名前も定かでない豪族が眠っているそうだが、桜の季節だけでなく市街地の展望を楽しむ市民にしょっちゅう踏みつけられ、痛くないのだろうか。


 強風がチーズバーガーの旗を波打たせ、その前をいろいろな人たちが歩いて行く。

 ハイヒールの女性、冴えないシニア男性、柴犬を肩に担いで(笑)いくカップル。


 だれひとり足を留めないどころか、ちらっと見やることさえしない、まるで無視。

 ネットランクが最低、空いていそうな店舗をあえて探して来たのだから仕方ない。




      🍔




 とはいえど、自動ドアを一歩入り、ん、これは? ペンシル描きの眉を曇らせた。

 トイレの消臭剤の匂いが立ちこめているし、椅子は……全脚が冷える合成皮革だ。


 用心に膝掛を持参して来たからまだいいけど、なければ十分もいられないだろう。

 それに男性スタッフ……清潔感と無縁で、マスク装着といえど、やたら咳をする。


 いくら連休に混まない店でも、飲食店として、これはさすがにアウトじゃない?

 さらに、イチイチ文句をつけるようだが、雑にかけたマヨネーズがはみ出てるよ。


 とはいえど、連休の独り客なんて邪魔なだけだし、目立たない隅の席で読書させてもらえればそれでいい。三十分が経過しても、ほかの客はだれも来ないけどね。💦



      🌉




 自分ひとりの幸せを求めようとしなくなってから、すうっと気持ちが楽になった。

 どんな不都合もなかったことにすればいいし、気配を消して、モノと化せばいい。


 望まなければ失望もないわけだし、むしろ、重なり合った葉っぱの奥の奥の葉に、何かの都合でたまたま日が射したときのように、思いがけない喜びのご褒美がある。


 と思ううちに、ただうるさいだけで耳障りだった有線が聴きなれた曲に変わった。

 YouTubeカラオケでもよく歌うサイモン&ガーファンクルの『明日に架ける橋』。



 ♪ When you’re weary

   Feeling small

   When tears are in your eyes

   I will dry them all


   I’m on your side

   When times get rough

   And friends just can’t be found


   ・・・・・・・・・・・・・・


   When you’re down and out

   When you’re on the street

   When evening falls so hard

   I will comfort you


   I’ll take your part

   When darkness comes

   And pain is all around


   Like a bridge over troubled water

   I will lay me down


   ・・・・・・・・・・・・・・



 生きることに疲れたきみ、自分がちっぽけな人間に思われ、友だちがいなくてさびしいときも、わたしだけはいつもきみのそばにいる、永遠に絶対的な味方だからね。


 激流にかかる橋のようにきみの支えになるよ、傷ついたきみが少しでも安らげる、そんな存在でいられるなら、それだけで十分に満ち足りていられるんだからね。🌞


 

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いつだってきみの味方だよ 🌝 上月くるを @kurutan

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