5.

 時間が去るのも早いもので今日はマラソン大会当日だ。

 プロポーズめいたことをしてしまった時からどんどんと練習がきつくなった。

 俺が弱音を吐こうとしているとあの時の事でからかわれる毎日だった。


「やっとこの日だね。はい」

「来てほしくなかった日だな。そしてそれはいらない! 」

「えええーーー。着けてよ」

「嫌だ! どこに男の猫耳なんて需要があるんだ! 」

「ボクにだね」

「限定され過ぎっ! 」

「ほらほら」

「って何をする。ジャンプして俺に着けようとするな! 」

「いいじゃん。可愛いとおもう……よ? 」

「そこは提案者として断言してくれ! というかこれ放送されるんだろ?! 割とマジで俺の猫耳姿が一生残るって最悪なんだが」

「そんなこと言わずにさ」


 そう言いながら優心が着けようとしてくる。

 不毛な問答は俺が猫耳カチューシャを着けるという結果で終わる。

 うわぁ、と自分で引いていると大会開始のアナウンスが流れた。


「もうだね」

「大丈夫か? 久しぶりの大会だろ? 」

「大丈夫、大丈夫。ボクこれでも本番に強いから。カイ君こそ大丈夫? 」

「……ここ最近まで運動不足だった俺にその言葉を投げるか? 」

「これは失敬。でもついてきてよね。ボクの隣はカイ君だけのものなんだから」


 その言葉に「ぐっ」と詰まる。

 それを見て悪戯っ子がいたずらに成功したかのような顔をする優心。

 もたついていると「よーい」と聞こえてきた。


 俺達は瞬時に切り替えて前を向く。

 そしてピストルの音が聞こえて俺達は、——走った。


 ★


 結果から言うと一位を取ることは出来なかった。


 同立三十位、という微妙な数字になったが、俺からすればかなり成績が良い。

 秋の高校のマラソン大会は期待できそうと思うも、「優心はこの結果に不満だろうな」と考え、チラリと隣を見る。

 しかし意外にも彼女は清々しい顔をしていた。

 不思議に思っていると優心は俺を見る。


「カイ君。ボクはやっぱり走ることが――好きだ!!! 」


 あぁ……、この顔だ。

 そう、この顔。


 俺も優心の笑顔は好きだよ。

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幼馴染は髪を切る ~清楚系美少女は猫耳つけて陰キャな俺と共に走る~ 蒼田 @souda0011

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