ある詩的外交官の手記

It read;



薄紫のモーツァルト

枯れ木の鍵盤を叩き

幻想の香気を放つ。

しかるに

あめより降る雨は

止むことを知らず。

生命いのちの鍵盤の色は

禿山はげやまへりた散りおわんぬ。

の地にて我が道は

 そうの風の嘆きに抱かれ

 のち

 崩れ落ちぬ)


  ……あゝ

  ラム酒の匂ひ纏ひし指の先

  倒れし我がしんの臓に

  こころおきなく突き刺すは

  夜といふ名のかなしきしらべ


罪 そは人間ひとの心なり。

鏡に映りしなれなれば

白痴の夢に貼りつきたる

おのが身を如何にせむや。

のアッシジの聖人の

胸に余所ゝよそよそしく浮かぶ様

まことに自らの棘にたおれたる

黒き薔薇のイデアとなりき。





I really didn't know

  what that was.

But a son of the moon

  unfortunately does.

"Shoulder Arms!"

  I heard it be said,

to a red, nobody's

  sign that's dead.



──※──※──※──※──※──



2023/5/22

鉄の嵐に見舞われて、

手記の心は粉塵になった。

泥濘ぬかるみに生まれた一羽のからす

白鳥の首に噛みつけば

くちばしはドロドロとただれ落ちて

……ああ 暗き闇の使者つかい

最早祈ることさえままならぬ!



2023/5/29

虹の妖精が枯れていた。

明日の嵐が空腹なのだろう。

感情は白痴を装いながら、

夢現の将兵に永く憧れる。



2023/5/36

人間ひとの公準よ を愛せよ。

愛の環よ 人間の純心たれ。

過ぎ行く星の足跡あとを見て

今日こんにちの思想の黄昏を知れ!

……かぐわしき美のまぶた

懺悔ののりしかと閉じながら。



2023/5/294

燃え盛る甲虫カブトムシの胴体を

欲望の一本糸で切り離したら、

理想のように死んだ。

唉 癌は何処だ?

……癌とは 何だ?



──※──※──※──※──※──



2023/5/604287

毛布代わりの一番星、

堕ちた天使の魂を焼く。

愛の結び目が

ポロポロ

ほどけて

消え



2023/5/1068432

詩とは何だ?

─── L'Ère des Cristaux!



2064/19/39716

O ich bin noch am Leben!

死の残滓ざんしに接吻すると、

やがて 心に伸びる海岸線は

陽に浴する翡翠の森となって、

厳かに蒼い風を生み始めた。



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詩集 Art Gallery もざどみれーる @moz_admirer

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