前置詞

死の煙突から せいの霧

にょきにょきにょきっ

と 舌の踊る顔を出す


生まれたてのスペースシャトル

悲愴の人間ひとに翔んでゆけ

あの澄み渡る地上の星に

かろくもしかと 導くように


ああ 吁

陶然たる

皐月さつきの空が暴れている

(瞳にまつわる 一雫ひとしずくの季節)

夢の周りにフサフサ揺れて

僕を殺め損ねたシクラメンの毒も

今ではもう悉皆すっかり枯れて

麗らかな風にカサカサカサカサ

邪気のジャもなく笑われている


生命流転の景色の中

人類にとっての五月さえ

蕭索しめやかに 小刻みに震えながら

とてもとても 死のうとしている


さようなら 五月の徒花あだばな

次は遅咲きの桜の姿で

また来年 お会いしましょう


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