第4話 クライマックスファイナルステージ

 2日あけて、京セラドームでファイナルステージが開催された。最初の3戦はナイター。週末はデーゲームだ。6戦のうち、4勝した方が日本シリーズにいける。バファローズは、1勝のアドバンテージをもっているので、3勝すればいい。圧倒的にホームのバファローズが有利だ。しかし、ホークスに2連勝してきたイーグルスは波にのっていた。反対に、バファローズはおよそ10日間のブランクがあった。それなりの練習をしていたが、油断とおごりがあったかもしれない。


 初戦、バファローズはエースの山木。イーグルスはベテランの村中。二人の投げ合いになり、7回バファローズにエラーがでた。1対0でイーグルス勝利。これで1勝1敗のタイとなった。

 第2戦はバファローズ児島。イーグルスキラーだ。イーグルスは岸田。どちらも好投したが、5回にバファローズの吉山がソロホームランを打った。試合はそのホームランが決勝点となり、バファローズの2勝1敗となった。

 第3戦は、バファローズ宮地。イーグルスは鹿島。余裕を示したバファローズにスキが出て、8番辰川から深田・コジロー・西山と連続ヒットで2点をとった。鹿島は4番杉山にソロホームランを打たれたが、2対1でイーグルス勝利。これで2勝2敗のタイになった。

 第4戦、10月15日(土)午後2時からのデーゲーム。京セラドームには驚きの光景が見られた。満員のスタンドの半分近くがイーグルスファンで占められたのだ。外野席だけでなく、内野席までイーグルスのレプリカユニフォームが見られた。中には懐かしい近鉄のユニフォームを着ているファンもいた。これにはTVの解説者で来ていた岩嶋や磯田が涙を流さんばかりに喜んでいた。二人ともバファローズからきたイーグルス創設メンバーである。

岩嶋「うれしいですね。いまだに近鉄ファンがいるんですね。それもバファローズ側でなくて、イーグルス側にいるというのもうれしいですね」

磯田「本当にうれしいです。それにしても、これだけのイーグルスファンがいるということは、東北から大挙してやってきたということですよね」

アナ「球団が、仙台からのシャトルバスを出したということですよ。大型バスで20台といいますから、それだけで1000人はいますよね」

磯田「ファンの数はそんなものじゃないですよね。関西にもイーグルスファンが多いということですよね」

岩嶋「もしかして、ヴィッセル神戸のファンじゃないですか?」

アナ「オーナーが、動員令を出したという噂もありますよ」

磯田「あのオーナーならやりかねませんね。ほら、外野席にヴィッセルのユニフォームを着ているファンがいますよ。夜は、サッカーの応援ですかね」

 試合前からお互いの応援で盛り上がり、イーグルスのメンバーはまるでホームにいるような感覚でいた。3塁側にいるので、仙台のスタジアムと同じなのだ。

 バファローズは、山沢。イーグルスは則山が先発。1回表、コジロー・西山が連続ヒット。浅川がイーグルスファンであふれるレフトスタンドにぶち込み、早々に山沢をKO。試合は5対2でイーグルス勝利。イーグルスが日本シリーズ進出に王手をかけた。


 第5戦。10月16日(日)またまたスタンドの半数は、イーグルスファンだ。中には、昨日のシャトルバスで帰らずに、大阪に泊まったというファンも少なからずいた。

 バファローズは王手をかけられたので、エースの山木が率先して出てきた。予定では最終戦で投げることになっていたが、もう負けられないということで、出てきたのだ。本人は大丈夫と言っていたが、休養不足は否めなかった。

 イーグルスは若手の早田。勢いはあるのだが、体力不足が課題で、今日は継投がカギと思われた。

 イーグルス打線は、山木に球数を投げさせる作戦をとった。まともにいったのでは打てない。くさい球はカットしてファールにしたが、あてることもできずに三振することも多かった。

 6回。コジローが四球を選んだ。ここで、阿川の出番。だれもがバントで送ると思っていた。しかし、阿川はバスターを選択。前進してきたファーストの東宮の脇をボールが抜けていった。コジローはスタートをきっていたので、難なくサードまでいけた。ここで浅川の登場。だれもが長打を期待したが、山木の内角球を打ちにいった浅川の左手にボールがあたった。浅川はよけることをしなかったので、死球ではなく、ファール扱いになった。イーグルスファンからは大ブーイングだ。浅川は一度ベンチにもどり手当を受けたが、出てこなかった。代わりに代打山沢が告げられた。山沢はセカンドゴロに終わり、ダブルプレーでツーアウト。これで山木は気を抜いたのか、続く島本が右中間に二塁打を放った。これでコジローがホームにきて先取点。

 7回は、宮田に交代。3人を難なくうちとった。

 8回は、ユン。これまた持ち前の速球で三者凡退。

 9回は、守護神松木。一人は打ちとったが、続く吉山にセンター前に運ばれ、杉山にもライト前に打たれ、ワンアウト1・3塁のピンチ。今日の松木は本調子ではない。バッターは東宮。なかなかの好打者だ。ここで石山監督は及川をマウンドにあげた。この究極の場面で育成あがりの新人、それもキャッチャーが本職の及川の登場でスタジアムはどよめいていた。強心臓の及川でも緊張したらしく、東宮を四球で歩かしてしまった。

岩嶋「及川くんの四球初めて見た気がします。データは?」

アナ「たしかに初めてですね」

磯田「投球回数は少ないし、ストレート一本の投手ですからね」

岩嶋「次の赤林が勝敗のポイントですね」

 内野陣がマウンドに集まり、及川を励ましている。鈴本はなんか笑いをさそう言葉をかけていた。要は、「打たせろ。オレたちが守るから」と言っているのだ。

 そして赤林への1球目、「四球の後の1球目は打て」の減速のとおり、赤林は強振してきた。しかし、ファーストへのぼてぼてのゴロ。鈴本がうまくさばいて、セカンドへ送球。間に合うかどうかのきわどいタイミングだが、ノータッチでいい。ショート深田はセカンドベースを踏んで、ファーストへ送球。セカンドの山沢がカバーに入り、そのボールを受けた。ダブルプレー成立! と思いきや、バファローズの仲間監督がリクエストをだした。セカンドのタイミングにリクエストしたのだ。セーフならば同点の上にツーアウト2・3塁のピンチになる。モニターにいろいろな角度からのビデオが流れたが、どちらとも言えない。スタジアムからさまざまな声が聞こえてきた。

 しばしの時間がたち、責任審判が出てきた。スタジアム中が固唾をのんで、次の動作を待っている。そして、右手が挙がるとイーグルス側からは大歓声。バファローズ側からは大きなため息が流れていた。

岩嶋「イーグルスやりましたね」

磯田「リーグ最終戦の山木のコメントに、イーグルスメンバーが奮い立っていましたからね。ところで、今日のヒーローはだれですかね?」

岩嶋「決勝打の島本は決定でしょうが・・・投手陣はだれですかね。勝利投手は早田ですが、出てきますかね」


アナ「今日のヒーローインタビューです。一人目は島本選手です。今の心境は?」

島本「うれしいっす」

アナ「打席にたった時は、どう思っていましたか」

島本「打ってやろうと思ってました」

相変わらず、ひょうひょうとした受け答えだ。

アナ「ファンの皆さんへ一言どうぞ」

島本「多くのファンの皆さん、大阪まで応援にきていただき、ありがとうございます。これで、仙台でまた試合ができます。これからも応援お願いします」


アナ「二人目のヒーローは、初セーブをあげた及川選手です。初セーブおめでとうございます」

及川「ありがとうございます。うれしいっす」

アナ「松木投手の後で、どんな気持ちでしたか?」

及川「もう心臓がばくばくしていました。投げるのが精一杯で、初めて四球をだし、ピンチを広げてしまいました。でも鈴本さんたちがゲッツーにしてくれて、うれしかったです」

アナ「内野陣がマウンドに集まった時に笑っていましたが、何か言われたんですか?」

及川「鈴本さんに、終わったら風呂でオレの腹芸を見せてやるよ。と言われたんです。そしたら、茂田さんが、みんなでやってやるよ。と言ったので、それを想像したら笑ってしまいました」

アナ「見てみたいもんですね。最後に駆けつけてくれたファンの皆さんに一言」

及川「ありがとうございます。皆さんが、大阪まで来てくれて、チーム全員パワーをもらいました。仙台でまた試合ができること、とても嬉しいです。平日のデーゲームになりますけれど、また応援お願いしま~す」

大きな拍手がスタジアム中にわき起こった。


磯田「いやはや初めてのヒーローインタビューと思えない受け答えでしたね」

岩嶋「心臓に毛がはえているんじゃないですかね」

磯田「ヤクルトとの日本シリーズ楽しみですね。1・2戦は神宮ですから、5戦までで決めたいですね」

岩嶋「そうなればいいですけど、初優勝の時は7戦までいきましたからね。どちらにしても楽しみですね」


 作者より  今回の小説はここまでです。日本シリーズは読者の方が想像してみてください。読んでいただきありがとうございました。続編は・・・・・・・・・・・あるかもしれません。その時は、また読んでください。      飛鳥 竜二

 ※この小説は2022年9月21日に書き上げ、今回修正したものです。イーグルスの奮起を心より期待しています。

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