呪いと魔女 1

 右手には茶色のハードカバー。それを本棚に仕舞おうとして手を止めた。カチカチと秒針の刻む音がいやに耳に残る。溜まっていたものを出すように大きく息を吐き出した。そのまま本棚から何冊か取り出し、その裏にそっと置く。隠すように読まれないように。

 親友の形見である『月光』という本を、手放すという選択肢は、俺にはなかった。

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