第14話 風邪の魔力

夏風邪をひいた。


昨日から、少し喉が痛かったが、あまり気にせずに遅くまで映画を観ていたのが良くなかったのだろう。


自分の頑丈さを過信していた。


30過ぎたら身体にガタがくるとよく言うけど、26の段階でその片鱗が現れたことに鬱になりながら、職場に休みを取ることを伝える。

電話に出た教頭は、「ゆっくり治してください」と言ってくれた。もし、校長が出ていたら、嫌味の1つも言われただろうから、運が良かった。


生徒達は、自習になって喜んでいるだろうが、こっちからしたら予定していた授業方針を変えなくてはいけないので、休めた喜びよりも、修正の面倒くささが勝つ。


さて、ヨーグルトがあっただろうから、それ食って薬飲んで寝るとしよう。

\



昼に目が覚めた。

多少はマシになっている。


寝巻きが汗でぐしょぐしょなので、別のに着替えることにする。

ランニングウェアがあったので、それに着替える。


部活で生徒達と一緒に走る用のものだったが、この分では明日走れるだけの回復はしていないだろうから、明日までに乾かなくても問題はない。


冷凍の炒飯を解凍して、テレビを観ながら食べる。

テレビの画面を観ても気分が悪くならない程度には回復したようで、芸人さんのネタにも笑える余裕ができてきた。


食事が終わり、もう一度寝る前に、スマホをチェックする。

LINEが20件ほど入っている。


先生方からの『お大事にメッセージ』や、星田と相馬から、今日遊びに行っていいかの確認などに返信していると、一件、見慣れていないアイコンがあることに気づく。


<i>という名前。


メッセージを見てみると、<それ見たことか!>と書いている。

誰だ?


そのまま<誰だ?>と返信してみる。

すぐに帰ってきた。


<佐藤愛です!>


あー。そういえば、4月くらいにLINE交換したっけ。

続けて、メッセージが届く。


<いつか体調崩すと思ってたんだ。二月先生、生活が雑そうだから>

<ただの風邪だよ>

<風邪舐めないでください!一人暮らしで夏風邪なんて、洒落にならないでしょ!>

<申し訳ありません>

<放課後、お見舞いに行くね!>

<駄目だ>

<なんで?>

<生徒の貴重な時間をそんなことに使わせるわけにはいかない。部活に勤しんだ方が、絶対に有意義だ>

<何が有意義かは、私が決めるよ>

<違う。社会が決めるんだ>

<もういいよ!二月先生の馬鹿!>


風邪の影響からか、言わなくて良いことまで言った気がするが、今は寝たい。


佐藤のことは、治ってから考えよう。

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