第8話 コミュニケーション能力
4時限目の数学。
早く終わって昼飯食いたいと思ってんだろ?
俺もだよ。
空腹の状態で数式を一生懸命教えていたら、ガラッと音がした。
俺も含めた2年2組メンバーが全員扉に気を取られる。
そんな威圧を受けることになった可哀想な人物は、相馬だった。
しかも、顔に大きな痣をつくった相馬だった。
「・・・」
無言で自席に座り、堂々と寝始めた。
ふむ。
この場合、どうするか。
無視して授業を進めた方が楽だし、他の生徒にも迷惑がかからないだろう。
でもなぁ。こいつも生徒だからなぁ。
ちょっとだけ注意して、無理だったら諦めよう。
「相馬、せめて教科書開け」
教室がピリッとなる。不良が切れて授業がめちゃくちゃになる可能性が生まれたからだろう。
「・・・」
相変わらず、無言だが、虚な表情でゆっくり鞄から教科書を出してくれた。
「72ページな」
授業に戻る。
教室の雰囲気も元に戻る。
\
やっぱり、あの後なんかあったんだろうなぁ。
コンビニから見えたヤンチャな連中の1人は相馬だったんだ。
5限目は、数学が入っていなかったので、職員室でプリント作成している。
他の先生方も気にしていた。
純粋に心配している先生もいれば、厄介だと感じているであろう先生もいた。
もちろん、担任であるおれに色々聞いていたが、何も知らないのでヘラヘラかわした。
プリントのコピーをとる。
この時間は、特にやることがないので、考え事が捗る。
そういえば、あいつは誰か一緒に行動しているのを見たことがない。
一匹狼と言えば聞こえは良いが、俗に言うボッチである。
この高校は、分かりやすいヤンキーがいないので、ヤンキー仲間もいないし、真面目な生徒にはビビられている。
いや、ヤンキーだから友達ができないというより、単純にコミュニケーション能力が低いというのがデカいと思う。
周りも相馬に声をかけないし、相馬も心を閉ざしている。
これで友達ができるわけがない。
そんな相馬が、昨日、集団で外出していた。
「・・・4対1か?」
そりゃ勝てないだろう。相馬。
\
翌日、相馬は学校に来なかった。
その日の深夜、例のコンビニに行ってみた。
買い物のついでに周りを見てみようと思ったのだ。
買い物のついでだから、そこまでの負担ではない。
この辺は、寂れた公園があるため、とりあえず、そこに行ってみる。
まさか、そんな分かりやすい場所で喧嘩しねーだろと油断していた。
結論、喧嘩はしていなかった。
相馬が、知らないブサイク4人に金を渡していた。
暗いから、一万円札なのか千円札なのか分からなかったが、10枚くらいの厚みに見えた。
金は、アウトだ。
少し離れて、通報する。
「・・・よし」
公園に戻る。
しかし、改めて見ると、4人が4人全員ブサイクだな。
「おー。相馬じゃん」
4人のブサイクと相馬がこっちを見る。
「奇遇だな。ゲーセンでも行こうぜ」
「誰だテメー」
凄んでるつもりなのか、変な顔をさらに変にして睨みつけてくる。
「友達」
俺の返事を聞いて、4人のブサイクが笑い出した。
なんだ気持ちわりーな。
「相馬、お前、友達いたのか?」
不快な高い笑い声で相馬をイジる。
相馬は何も言わない。
「だからさ、ちょっとそいつ貸してくれよ」
「はっ、勝手にしろよ。こんなつまんねー奴」
ブサイクBが相馬に蹴りを入れる。
「どうも」
俺は相馬の手を引いて移動する。
予想してたより、早く離脱できたので、おまわりさんとは会わずに済んだ。あいつらは、軽い注意を受けるくらいかな。
さて。
俺の部屋に泊めるのは、流石にオーバーワークだ。
困った時は、頼りになる探偵さんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます