第7話 友達かな?

今日は忙しかった。


もうすぐテストなので、この時期から一気に問題を作成する必要があったので、放課後にドエライ集中力を発揮した。

一応、陸上部の顧問をしているのだが、「忙しいから!」と部員達に言ってこっちに時間を割いた。


ルール1 不要な残業はしない。


できるだけ残業時間を減らしたいので、優先順位を立てることにした。

まあ、たまには顧問がいなくて、ダラダラする練習も青春だろうから、堪忍してくれな。

そんな感じでマッハで仕事を終わらせたため、家に帰ってからも目がバッキバキだったので、じっと本を読む気分になれなかった。


明日は休みだし、ちょっと歩こうかと、外に出た。

相変わらず酔っ払いが我が物顔でうろついているエリアを抜けて、人通りの少ない通りになるおもちゃ屋さんに入る。


店長のおじいさんが趣味でやっているであろうお店なので、俺以外の客がいることがほとんどないから、落ち着く。

池袋に引っ越してきてから、1ヶ月に1回は通っているが、「このぬいぐるみはステイ」と買わないでいた商品が後で売り切れたということは1度もない。

よって、その時の気分によって買い物を楽しむことができる。


子供の頃に流行ったアニメのグッズを見ていたら、先客がいることに気づいた。


若い女性だ。


全身真っ黒だ。コナンの黒の組織みたいだ。カッケーな。

有名な魔法少女のキャラクターの小さなむいぐるみを真剣に見比べている。

そのアニメ面白かったよな、と、勝手に親近感を抱いていると、女性がこちらを向く。


やべ。


「おー。二月先生だ」


学校の外で先生と呼ばれることに恥ずかしさを感じながら女性を正面から見る。


「佐藤か」


「うん。奇遇だね」

私服だからパッと見では気づかなかった。

「先生もこの店くるの?」

「うん。ちょいちょい」

「へー。よく見つけたねー」

なんか褒められた。


「佐藤も?」

「うん。放り出しものがあるから」

手に持っていた魔法少女のぬいぐるみを見せられた。

「ほー」

放り出しものか分からなかったので、適当な返事をする。

「知ってる?」

「知ってる。にわかだけどな」

ガチの匂いがしたので予めバリアを張っておく。


「へー。誰が好き?」

作品の話をする。予想通り、俺よりよっぽど詳しい佐藤は、「あのシーンは、実はこのテーマを描いてる」みたいな話をたくさん持っているくらいのガチ勢だった。

佐藤がむいぐるみを買う流れに従い、俺も安いぬいぐるみを買った。


近くのコンビニまで一緒に歩いた。


「なんか、アイスとかなら買ったるよ」

「やったー」


佐藤がアイスを選んでる間、漫画雑誌を立ち読みすることにした。


ふと、外を見ると、ヤンチャそうな奴が5人で歩いているのが見えた。

別段珍しいことではないので、すぐに漫画雑誌に目線を戻そうとしたが、真ん中にいる奴に身に覚えがあった。


「・・・相馬?」


「二月先生ー。これにする」

佐藤に声をかけられて意識をそちらに向ける。

アイスと俺の缶コーヒーを買って外に出てて姿を探したら、もう見当たらなかった。

「どうかした?」

「いや」

ついでに買った缶コーヒーを飲みながら答える。

「なんでもない」

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