like a sparkle

 朝練のために早くから登校する生徒が多いのがこの北斗高校の特徴である。スポーツは県内外から優秀な生徒が集まっており、全国大会に出場する部活も多いと聞く。一方で進学にも力を入れており、文武両道を掲げる校風にそぐわない実績を残しているのだとか。 

 最寄りの駅に着いたのは7時32分。そこから歩いて5分。グラウンドではボールとバットがぶつかる金属音が響いていて、ランニングの掛け声も聞こえてくる。もちろん、蝉の鳴き声も。朝から騒がしい学校の前にひときわ眩しく煌めく、彼女がいた。

 「おはよう、日陰ちゃん。」

 褐色の髪に陽光が乱反射して、プリズムのように輝いている。肌は焼けた砂のように熱を帯びた白。真夏の太陽がそのまま擬人化したような彼女。

 「待ってたよ。もう日差しが強くってさ。もう溶けるかと思ったよ。」

 「もしかして、ずっと待ってた?教室で待てばいいのに。」

 「違う学校の生徒と勘違いされちゃうじゃん!」 

 昨日と変わらないセーラー服。30度を超える気温の中でも涼しげに着こなす姿は彼女のスタイルにあっていてさながらモデルといわれても頷ける。

 「はやくいこ!時間もったいないよ!」

 

 3C教室には誰もいなかった。見回りの先生が開けてくれてたのか、窓が解放されそよ風が吹き込んでいる。私はいつも座っている窓際の一番後ろに腰掛ける。そして真夏は横の席に着く。

 鞄から青色の分厚い参考書とノートを取り出す。横目に見ると真夏は古典の問題集を広げているようだ。

 暗算とかの計算が得意というわけではない。どちらかといえば頭の回転も早いほうとは言えない。典型的な文系であるが、数学の道筋を立てる思考法は嫌いじゃない。そのうえ、国語や社会のような文系科目と違って点が伸びやすいのだ。なので私はこの夏休み、数学と心中すると心に誓ったのだ。

 数問解き終わって体を伸ばす。

 「日陰ちゃんって古典得意?うち超苦手なんだよね。」 

 「私も得意じゃないかな。」 

 勉強の合間に談笑していると前の扉が開いて、ガタイのいい男の子が入ってくる。

 「おっす、凪野。珍し、お前がだれかといんの。てかうちに制服じゃないよな。」

 「おはよ。こっちは島本さん。なんか今の時期に転校してきたらしいよ。」

 「よろしく、島本真夏です!」

 「太田翔。まよろしくな。」

 彼はこの夏まで野球部にいたけど甲子園に行くこと叶わず。引退して大学受験に切り替えたそうだ。誰にでも分け隔てなく優しくて転校してきた私にとって数少ない友人の一人だ。

 「凪野さんと太田君、いつもはやいな。やっぱ君たちには敵わないな。」

 太田君が来た後、すぐにまたクラスメートがやってくる。長髪は夏の日さえ敵わない黒さですらっとした高身長で清楚系美少女という言葉が似合う女子生徒。 

 「お、見ない方がいるのだが。」 

 「ああ、島本真夏っす。いろいろあって日陰ちゃんと勉強することにしたの!あ、怪しいものなんかじゃないからね!」

 「いろいろのとこ省略されたら怪しく感じるんだけど。まあいいわ。遠野楓。一応このクラスの委員長をしているわ。」

 容姿端麗、成績優秀、品行方正。誰がどう見ても美女。クラスの満場一致で委員長に。そして弓道ではインターハイ出場。おまけに学年4位の成績。そして、友達のいなかった私に最初に話しかけてくれた。非の打ち所がない。

 いつもは3人で勉強しているが、今日は4人。冷房のないこの教室はいつもより少しだけ熱を帯びているような気がした。

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