第一章 Supplementary Information

【蘆田幸村 25歳男性】

中小企業の広告代理店に入社したが絵に描いたようなブラック企業である。

辞める勇気も無く心を削りながら淡々と心を殺して日々生きていた。

彼は輝く半月の夜に吸い込まれる様に転生した。

彼の心はこの世界から逃げようとしていた。

この世界ではない遠い何処か...その心に応える様に彼は導かれてしまう。


【聖騎士オスカー】

ルレベルク聖騎士団の1人。

何か特質があったわけでもなく、貴族の出身でもない彼を支えたのは信念のみである。だから彼は黄金のサーコートと、太陽を愛し光を追った。

その強い意志は決して死なない使命と変わり、後の転生者に託されることとなる。それは剣を知らない転生者に戦いの記憶を宿し思い出させる。

それは果たして”運命”と呼ぶのか、または運命を縛る”呪い”であるのか。



【聖女エレ】

火の神ヴェスタが最期に残した実体のない分け身。

火は理の始まりの1つとされ、生命の誕生の火種となった。

故に彼女はただ彼の思いを宿し、使命のために動く。

知らぬ転生者を待ち、運命を託し共にある。それは決して視座に揺らがない。

確かにあった想い出の数は忘却に消えていこうとも、彼女はただ導くだけだ


【狭間の監獄塔】

転生者が流れ落ちるはじまりの場所。決して地図にはない理の何処か。

それは以後の世界なのか、以前の世界なのか。

この場所に居座り迎える男は決して自らを語らない。

その答えに気付く時、導かれた運命は世界の真実に触れるだろう。

然るべき転生者に”世界に残った死して尚消えない使命”を与える。

その見えない繋がりはこの男にしか分からない。

転生者は共鳴と共に使命と想い出を背負う。

それは決して解き放たれない呪いでもあろう。誰かの思いを紡いでいく。



【廃城オーランド】

かつて王を失った小さな孤城は1人の英雄により復興した。

イムブルク南端に聳える孤城は海を渡る全ての人間たちの拠点でもあった。

だが世界の崩壊が進み、戦火に巻き込まれると、権威のない城は何の意味もなさない。

南端から城へ続く道はかつて人が栄えた面影を失い、姿なき怨霊が海へと泣き叫び続けている。


【シュルデン】

シュルデンは辺境の国である。故に異端はなく自らの意志は遥か高い。

彼らが信仰する火の神は決して争いを好むことはなかったという。

しかし彼らに流れる魔力は、皮肉にも戦いにおいてこそ真価を発揮する。

仲間のために命を顧みない。しかし決して馴れ合うことはない。

蛮勇は愚であれ決して背中を見せず。突き進む姿を故郷では勇者と呼んだ。


【黄金の守護騎士】

かつてルレベルクには2つの騎士団がいた。

女神リオネアの親衛となる「宮廷騎士団」と、戦地へ赴く「黄金の騎士団」

彼らは国を守る両翼と呼ばれながら、密かな対立関係にあった。

宮廷騎士団はイムブルクへ赴き、自らを封印する彼女と共にあった。

欠片を集め、神々の意思を知り運命を託す者の試練となり

その姿は皮肉にも黄金の力を秘めた騎士団の有り様であった。

派閥などない。元より彼女の加護の元、太陽の下では光はたった1つであった。


【狂人】

理性と自我を失った人間の姿。

見境もなく本能のままに動き、行く宛も意思もなく操られる様に徘徊を続ける。

彼らには既に何も見えない。希望も未来も恐怖も死も。

狂ってなお縋りたく、人間として無くした大切なものを欲し襲うのだ。


【成れ果て】

理性と自我をなくした生命の果ての姿。それはかつて人間であり動物でもある。

身体に流れる魔力が外のエネルギーに呼応し誇張させ死んだ肉体を暴発させる。

一部のみ名残を残し異形へと姿を変える。とある学者は唱えた。

正しき形を知らない滅茶苦茶な姿は、まるで初めて生物が生まれた瞬間に近いのかもしれない。


【魔物】

純粋な魔力を宿し、神の力で人間より以後に誕生した生命。

彼らの誕生は争いの起源と言っていい。だが彼らは堕落的な進化をしない。

姿形はまるで動物に近しく、皮肉にも醜い魔物にでさえ生命としての心が宿るものだ。神が自らがそうであると願った様に。

そしてそれは無機物に魔力を与えるきっかけともなった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る