授業を受けていると、マナーモードでスマホが鳴った。

一瞬ギクリとしたが、あれはもう消したから大丈夫だとスマホを開くと園長からだった。メールには

「航君の、治療費について」と書かれていた。

メールを開くと今までの比じゃない金額が載っていた、僕は思わず立ち上がり

「え!」

声に出ていた。

授業を受けていた生徒と教授が訝しげに僕を見て

「どうかしましたか?」

僕は慌てて

「いえ、すいません何にもないです」

座り直しスマホを見た。

もう一度金額を見ても金額がかわることもなくため息が出た。

こんな金額どこから出せばいいのか大学を辞めて働いたとしてもそうそうに出せる金額では無い…

取り敢えず授業が終わり次第銀行に行って残高を確認ないと昨日は給料日だったはず足りないだろうけど仕方ない最悪ローンとか出来ないだろうか、

僕はスマホを仕舞いため息をついた。

本当だったら岩崎と夢子に昨日のお礼を言ってご飯でも一緒に食べようと思っていたけどそれこそ無理そうだ。

内心ガッカリした。

授業が終わり僕は足早に近くの銀行へ出向きATMで残高確認して一瞬目を疑った。

尋常じゃない金額が僕の口座に振り込まれている試しに10万下ろしても0の数は変わらない

「はぁ!何なんだよ、これ……もしかしてあの時の?」

あの時何て言っていた?確か

「暮林晴人の生涯年収が月村圭様の口座に入金致しました」

とか言っていたが本当だったのか?

にわかには信じられないけど、こんな馬鹿みたいな事があっていいのだろうか?

人の死がお金に……?

「あの」

ビクッと後ろを振り返えると行員が訝しげに

「どうかなされましたか?お客様…何か不審な点でも?」

僕は唾を飲み込み

「す、すいません、何でも無いんです」

手に持ったお金を急いでリュックの中にねじ込み銀行を出ようとすると

「お待ちください!」

と行員に止められたギクリと立ち止まり、

もしかして僕の口座のお金の事を怪しんでいるのだろうか?

普通の学生が持つには多すぎる金額だもし警察にでも通報でもされたら…逃るか?イヤ、それこそマズイだろうと恐る恐る振り返えると行員はニッコリと笑いながら

「カードをお忘れですよ」

「…あ、ありがとうございます。」

行員からカードを返して貰い頭を下げて逃げるように銀行を後にした。

そして何処か一人になれるところにと大学のひと気のないトイレの個室に入り改めて通帳を見ると何千万とのお金が振り込まれていた。

これが暮林晴人の生涯年収と言う事なんだろうけど恐ろしい反面正直有りがたかった。

これだけのお金が有れば航の治療費が払えるし大学を辞めなくて済む、そして無理なバイトをしなくていい。

人一人殺してお金が入るなんて……

「それに…あの男は生きていたとしても、所詮他人に迷惑かけるだけの存在だ!あれはあれで良かったんだ!そうだそうなんだよ、うん」

もう一度通帳を見て、僕は僕に言い聞かせた。

そして「よし」と立ち上がりコンビニへ行き航の治療費を園長に振り込んだ。

そしてしばらくすると園長から連絡が来て

「月村さん、お金の確認が出来ました。やっぱり月村さんは弟さん思いのお兄さんだわ」

園長の話を適当に頷き航の事をお願いしますと電話を切った。

これでいいとホッとしスマホを取り出して岩崎にメールをした。

「今日ご飯でも行かないか?夢子も一緒に」

入れると直ぐに

「いいのか?そんな直ぐじゃなくても良いんだぞ?」

「大丈夫だよ、この前のお礼もしたいし」

「無理すなよ?」

「臨時収入が入ったから大丈夫だよ」

「へぇ?そんならいいけど、じゃオレの方から夢子に言っとくわ」

「よろしく店も任せるから決まったら連絡くれ」

切ると今度はバイト先にもう辞める事を連絡して色々スッキリした。

これでようやく大学生らしい生活が出来ると、そうして岩崎から連絡が来て近くの居酒屋で合流してご飯を食べた。

夢子は終始心配してくれていたが僕がバイトを辞めたと伝えると

「じゃあ、もっと3人で遊べるの?」

頷くと喜んでくれた。

そんな夢子を岩崎はじっと見つめていた。

そして2人と別れて時間を確認すると、結構な時刻になっていた。

そしてふと気がついた。

あの日もこんな遅い日だったな…。

急に恐ろしくなり辺りを見回して誰も居ない事を確認して足早にアパートへ急いだ。

「あ!そうだ、冷蔵庫の中何も無いんだった。」

確か冷蔵庫の中がカラッポだったと思い出した、今ならまだスーパーがやってるはずと急いだ。

スーパーにつくと前と同じの閉店間際で僕1人しか居なかった。

食べ物やら色々カゴの中に入れてレジに行くと前と同じ店長が居た。

店長は僕に

「いらっしゃいませ、いつも遅いんだね?」

ニッコリと声を描けてくれた。

僕は曖昧な顔で

「今日は、友達と一緒だったもので」

「そっか、いいな楽しそうで」

うんうんと頷き店長は

「ありがとうございます、またのご来店お待ちしてます」

挨拶してくれた。

僕も頭を下げて店を出た。

暗くなった夜道を歩いているとスマホが鳴った。

岩崎からかもしれないと取り出して見ると画面に「生涯年収」のアプリが

「嘘だろ?消したはずなのに何で?」

僕はもう一度「生涯年収」をゴミ箱に入れようと何度タップしても「生涯年収」が動かない、どこをどうしょうともピクリともしない、

「何で、消せないんだよ!」

何度も何度も消そうとしたが消えないし何度も触っていたせいで「生涯年収」が起動してしまった。

画面にまたあの黒猫が現れ

「さぁ、だれを殺すのかにゃ?」

可愛らしく首を傾げている僕は気味が悪くなりスマホの電源をきった。

そしてアパートへ急いだ。

部屋に帰りテーブルの上にスマホ置いて近いうちにスマホを変えようと心に決めて今日はもう寝てしまう事にした。







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生涯年収 山田 こゆめ @coyume

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