生涯年収
メールが鳴った。
「8人目のメンバーの方が確定致しました。」
スマホを閉じて
「これでようやく始まる」
夢がかなう。
スマホのアラームが鳴ってる…止めようとして目が覚めると何故か玄関だった。
「あれ?何で…こんな所で寝てたんだっけ?」
変な寝方をしていたのか体が痛い
「イタタ…」
起き上がろうとした全身筋肉痛…何でこんなに身体中が痛いのか…それにリュックも背負ったままだ…なんとか這うように部屋に入りリュックを下ろした。
「はぁ…何でこんなに身体中痛い…て何か臭い?」
体が汗でベトベトだお風呂入らないとまずいなんとか痛む体にムチ打ち服を脱ぐと身体中擦り傷や痣で痛いはずだ。
そして浴室の鏡を見ると顔も酷い有り様だ
とたんに昨日の事がフラッシュバックした。
「!あれは…夢じゃなかったのか?」
いやでもと呟いても体の痛みが昨日合った事があったと証明している…なんで僕がと考えても答えなんて出ない…だったらもう忘れよう、僕は知らない僕は殺ってない関係ない…大丈夫だ…きっと…。
ふらつく体でお風呂から出ると
「ぐー」
と腹が鳴った。
そう言えば昨日から何も食べてない事を思い出しリュックから昨日買った惣菜を出した。買った惣菜は見事に潰れていたが無視して食べた。お腹は空いたが味は全然分からなかった…。
食べているとスマホが鳴った。メールだ。
「!」
僕は恐る恐るスマホを開くと岩崎からだった。
「今日どうしたんだ?」
ハッとスマホの時間を見るともう11時だった。今からではもう授業には間に合わないしそれにこんな体じゃ無理かと諦めた。
「ゴメン体調悪くて寝てた。今日は休むよ」
メールを送ると直ぐに
「そっか分かった。何か欲しい物があったら買っていくけど?」
岩崎のメールに慌てて
「大丈夫寝てれば治ると思うし」
見舞いを断ると
「そうか、何か困った事があったらすぐ連絡しろよ?一人で頑張んなよ?」
「分かったよありがとう」
と返した。
「早く元気になれよ!お休み」
僕はホッとスマホをしまい、残った惣菜を食べたたら段々眠気が襲ってきた。
「寝よ…」
そして這うようにベッドに倒れ込むと意識を失うように眠った。
ふと誰かに呼ばれたような気がして目が覚めた。
「?」
起き上がって伸びをすると、まだ少し体が痛いけど調子は戻ってる。
まだ怪我をした所は痛いけど最近の寝不足が解消されて気分は良かった。
やっぱり寝不足は良くないんだなと痛感して起き上がり冷蔵庫を開けると何もない…
取り敢えず水道をひねりコップに水を注ぎ飲み一息ついていると外から音がした様だった。
僕は昨日の事を用心し恐る恐るゆっくりドアを開けると誰も居ない
階段から下を覗くと夢子の後ろ姿が見えた。咄嗟に呼び止めようとしたが口を開いた途端口角か切れた感触で自分が酷い有り様だったのを思い出し呼び止めるのを止めた。
そして部屋に入ろうとしてドアノブに掛かっている袋が見えた。
僕は袋の中身を見ると栄養ドリンクやヨーグルト、ゼリーが入っていた。
そしてメモが入っていた。
夢子らしい几帳面な文字で
「早く元気になってね。岩崎、夢子より」
と書かれていた。
岩崎から僕の事を聞いたんだろう僕は部屋に戻り明日夢子に会ったらお礼を言おうと貰ったゼリーを有りがたく頂いた。
岩崎にはお礼のメールをしといた。
そしてスマホ画面にメッセージが届いている事に気がついた。
なんとなしにタップすると
「ご利用にあたって必ずルールをお読み下さい!そうでないと死んでしまう可能性が有ります。」
その物騒なメッセージを凝視して
「死って…昨日の奴みたいに殺されるって事なのか?」
昨日は気が動転して使ってしまったが…あんな事する訳が無い…でも一応見といた方がいいだろうか?ゴクリと唾を飲みアプリを起動させると昨日見た黒猫が目を細め笑ってる。
「ん?誰か殺すのかにゃ?」
聞いてきた。
一瞬あの時の記憶がよみがえったが頭を振り思い出さないように
画面から規約を見つけてタップした。すると黒猫がつまらなさそうに
「なんだ、つまらないにゃ…寝る。」
そう言い寝た。
そして画面が切り替わり
「生涯年収とは?」
タップすると
1、人を殺す事によって、その人が生涯得るだろう年収を受け取る事が出来ます。
2、殺す人の名前はきちんとフルネームで登録して下さい、もし同姓同名の人が居た場合は貴方様の近くに居る人を承認致します。
3、承認されない人は殺してもお金は貰えませんので気をつけて下さい。承認は必ず確認して下さい。もし殺してしまった場合は警察に捕まる事をご了承下さい。
4、殺し方ついては、どんな殺し方でも構いません。死体は国が責任を持って処分いたします。
5、生涯年収に登録されている方は何人殺しても国は貴方に罪を問いません。
「何だこれ?本当なのか?」
この規約を読む限りこのアプリは国に認められていると言う事なんだろうか?
そんなことあるんだろうか?
僕は急いでスマホやテレビで昨日の事を検索したがニュースになってなかった。テレビを消して
「こんな事が…本当に?嘘だろ」
もし本当に国が関わっているなら簡単に証拠隠滅出来るだろうが…
にわかには信じられない
それに殺した人の生涯年収を貰えるなんて…?
こんな馬鹿な事があるわけ無いと僕はスマホの画面のアプリをゴミ箱に入れた。
もうあんな事はゴメンだった。
あんな人間がまるでゴミの様に……思い出しそうになり慌てて頭を振り記憶を消そうとまたテレビをつけた。
そして念の為全てのニュース番組を確認しホッとひと息つき、
僕は何もしていないし何も見ていないと布団をかぶった。
明かりの無い部屋で女の声がする
女は笑いながら
「ふふふ、ねぇ?彼もう生涯年収やらないんじゃあないのかしら?」
もう一人の男が答えた。
「何故だ?どうしてそう思うんだ?」
「だってぇ、彼普通なんだもの普通の人間は人は殺さないわ」
「普通の人間か…でももう彼は人一人殺している。もう普通とは言えないと思うが?」
「そうかもしれないけど、もし彼が自分の事を普通だと思っていたら?」
「……成る程。だったら次を用意してやればいい」
「誰をけしかけるの?」
「大丈夫だ。もう考えてある」
女は楽しげに
「彼可哀想ねぇ…でも本当に待ち遠しいわね?」
言うと女の声も男の声もしなくなり
「…うん。」
誰かの一言返ってきた。
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