最終話 お別れ
こんばんは。
昨日、この思い出を心の奥に大切にしまえばいいんだって気付いてから気持ちもちょっとは楽になったよ。
もちろん苦しい気持ちにもなっちゃうんだけど、確かにあの時は幸せだったんだって、毎日思い出す中でやっと思えるようになってきたの。
だから今日、最後まで思い出そうと思う。
もう全部受け入れられる気がするの。
確かあれは夏休みが終わったあたりからだった。
私たちが通う高校はそれほど頭がいいとこじゃなかったけど、大学受験がすぐそこまで控えていた私たち。
「勉強間に合わないー!」
「
「そんなことないよ! 数学とか特に酷くてめちゃくちゃ勉強しないと間に合わない……。夏に遊び過ぎた罰じゃんこんなのー! いやまあ楽しかったけどさー」
確かに夏休みは思歩と思う存分遊びまくってた。
友達どうしみたいにはしゃぐ時もあれば、恋人同士としてデートすることもたくさんあって、思歩は私にとってすごく大切な人になっていった。大好きだったし、思歩のこと愛してると思ってた。
でも高校3年生の夏休みなのにそんなに遊んじゃってたから、思歩には迷惑かけちゃったかもしれない。
だって、私は適当にどこかの大学に行けたらいいなって思ってたからまだいいけど、思歩は行きたい大学があるみたいで、このままだと勉強漬けになっちゃうみたいだったから。
「なんかごめんね……」
「大丈夫、大丈夫! まあでもしばらくは一緒に遊んだりはできないかも……」
「うん、そうだよね……」
実際それからというものの、思歩は勉強の毎日で土日ですらほとんど話したりできなかったし、夜もお話してくれなくて、話せるのは学校だけ。
それまでのことがあったから思歩のことを感じられる時間が減って私は段々苦しくなってきちゃったの。
特に夜にお話してくれなかったのが苦しくて。
でもそんなの思歩に言ったって、思歩は勉強で忙しいんだから私のわがままなんだよね。そんなの言ったら思歩が困っちゃうもん。
そう思ってたのに。
秋の終わりごろに、どうしようもない苦しさが積もりに積もって、爆発してしまった。
「ねえ! なんで毎日夜に話してくれないの! いくら勉強忙しいって言ってもたまにはお話してくれてもよくない!?」
「だってしょうがないじゃん! 勉強しないと間に合わないんだもん!」
「そんなに受験が大事なの!? 私のことだって大事にしてよ!」
「ごめん……」
「もういいよ! 思歩なんて知らない!」
謝らせたかったわけじゃないのに……。
その後も時々話し合ったりしたけど、やっぱり同じ問題でぶつかってお互いに悲しい気持ちになっちゃうだけ。
そんなことが続いたら関係がうまくいくわけなくて。
ある日。
「もう別れよう」
そう告げられて私たちは別れてしまった。
ひぐっ。うっ……。
すー。はー。
苦しいけどこれも大切な思い出。うん、そう思えたら少しはマシになってきた。
でもどうしたらよかったのかな……。
思歩のことしか見えてなかった私が悪かったのかな……。
もっと色んな人に助けを求めればよかったのかな……。
こうやってあなたにお話聞いてもらえて、すごく助かっててね。だからきっとこうやって助けを求めるのって大切なんだなって思えたんだ。ありがとうね。
思歩に
なんだかこれから前を向いて生きていける気がする。
でも漠然とそう思うだけじゃだめだから、ちゃんと思い出してみるね。どうやったら苦しいことがあっても前を向いて生きていけるのか。
苦しい思い出でも、その時はちゃんと幸せだったならそれは大事な思い出。大切なものとして心の奥にしまっておくの。
どうしようもなく苦しくなっちゃうことがあったら、ちゃんと他の人に助けを求めること。そのためには頼れる人を見つけないとだね。思歩のこと引きずってて、今の大学で友達とか全然いなかったけど、少しくらいは友達増やそうかな……。気になるサークル見に行ってみるとかしてみよう。
うん、前に進めてる。
これならきっと大丈夫。
今もまたちょっと思い出しちゃって涙出ちゃってるけど、大切な思い出だから、それも含めて認めてあげられるの。
ずっと苦しいお話ばっかり聞かせちゃってごめんね。
でもすごく助かったよ。
ありがと。
あなたにも感謝だし、思歩にも今なら感謝できるよ。
ありがとね、思歩。
☆
もし応援コメントを書いてくれる優しい人がいたら、私(由未)が答えるよ!
あなたの感情、大切にするよ。
(作者にコメントしたい時は「作者さんへ」みたいに書いてくれたらいいよ!)
それから、もう一度。
お話聞いてくれて本当にありがとね。
そばにいて。 だずん @dazun
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます