第9話 勝利


剣を振る…走る…剣を振る…走る…振る…走る…振る…


兎に角、必死だった…敵は多い、止まるな…止まれば囲まれてすり潰される…斬って、走って…剣を振って…また走る…


そして、いつの間にか敵は居なかった…


「こ、これって…」


「流石に驚き…」


「おいおい、マジかよ…」


「………レイ…」


声がした…名前を呼ばれた気がする…声の方を向くと皆がいた…よかった、他の場所も何とかなったみたいだ…


キャサリンも無事な様だ…ウィルとノルも目が覚めてよかった…


アリサ…君も戦ったんだね…ボロボロになって…でも、よかった…あ…ヤバい…意識が…


「レイ!!」


体に力が入らずに倒れそうになったが、大きな手が僕を支えてくれた


「よくやったな、レイ…お前のおかげだ…我々の勝利だ」


「……ハハ…マテウスさん…」


「しかし、良かったのか?力を隠していたのに」


「そんな事言ってる場合じゃなかったですから…別に隠していたわけでもないですし…教えもしませんでしたけど…それに…アリサを…皆を守る為です…どうってことありませんよ」


「そうか……ありがとう…」


「……初めて貴方に認められた気がします…」


「そうだったか?」


「そうですよ…あ、マテウスさん、まだ本人には言ってないんですけど」


「何だ?」


「アリサをください…」


「……………………………お前ならいいだろう」


「今、物凄く間がありましたね」


「娘を男にやるなど認められるはずがないだろう…しかし、アリサももう子供ではない…それだけだ…」


「そうですか…」


「レイ!!大丈夫!?怪我は!?」


アリサが走ってきて、僕をマテウスさんからひったくる、あぁ、泣かないでよ…あと、そんなに揺らさないで…痛い…


「アリサ、もっと慎重に扱え、見た所傷はなさそうだが、疲労が溜まっている」


「あ……ごめんなさい、レイ、大丈夫?」


「うん、ちょっと疲れただけだよ、僕は大丈夫だから、泣かないで、アリサ」


「もう、本当に無茶して…心配したんだから…」


「うん、ごめんね………ごめん…少し寝るよ…」


「あ、レイ?寝ちゃった…」


「仕方ないだろう、これだけの敵を1人で倒したのだから」


広場は敵兵の死体で埋め尽くされていた…その数は1249人…広場にいた敵部隊の半数以上をレイ1人で撃破した


「イースレット騎士団長…」


「……何かね?ノル・リンブル」


突然、ノルが近づいてきて、お父さんに尋ねた


「彼は…レイは、何者なんですか?」


「………君はそれを聞いてどうするのかね?」


「どうって…明らかに異常ですよ!こんな…人間業じゃない!」


「ちょっと…ノル…何を…」


「アリサだって疑問を感じてるでしょ!?たった1人でしかも僕らと同い年の学生が、訓練された兵士の2,000近い部隊の半数を倒すなんてあり得ない!」


「だからって!…少し落ち着きなさい!レイはこの国を、私達を守る為に戦ったのよ!」


「だからって、こんな、人間離れした力…まるで、ばけ…」パンッ!!


「………え?」


乾いた音が響いた、私は勿論なら本人が驚いている、何故なら婚約者に頬を打たれたのだから


「な、何するんだよ…キャサリン…」


キャサリンは泣いていた…悔しそうな表情で…下唇を噛んで…


「ノル、頭を冷やして…今のは、ダメ…いくらノルでも、許さない…」


「な、何言ってるんだよ…キャサリン…だって!君も!皆も!絶対に思ってるじゃないか!あり得ないよ!たった1人で1,000以上の兵士を殺せるなんて!」


ノルは必死だった…でも、おかしい…なんで、あんなに必死なんだろう…私達友達じゃなかったの?貴方はレイと友達じゃなかったの?どうして…


「そこまでだ、リンブル君…」


「ですか!」


「いつまでも子供の癇癪に付き合ってるほど我々は暇じゃない…」


「っ!……申し訳ありません…」


ノルはお父さんにそう言われて、おとなしくなった…なんだか、今のノルは嫌だ…


「………おい、誰か、レイを運んでくれ」


「俺が運びます」


ウィルが真っ先に名乗りを上げた…


「ウィル…」


「心配すんな、アリサ…」


「私も付き添う、アリサ行こ?」


「……ありがとう、2人とも…」


私達はノルを見るけど、既に歩き出していた…













「あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない……………こんなはずじゃ……化け物め……」

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終わらない明日へ うめとう @YUDAI3430

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