第8話 剣

王城前の広場では城へと続く道に広がる障壁により足止めを喰らっている部隊がいた


「まだ突破出来ないのか?」


「はっ、どうやら強力な魔法防御壁を何枚も展開しているようで、破壊、解除を試みておりますが…その…」


「ふん、例の魔道具か…データを摂るのを忘れるな、既に勝敗は決したも同然だ、急ぐ事はないだろう」


「よろしいのですか?」


既にここを守っていた王国の兵は引いている、残るは城に残る親衛隊くらいだろう、ならば数で勝る我等が負けるような事はあるまい

指揮官はそのような事を考えていた、だが、それは誤りだ


広場から引いた兵は他の戦場へと向かった、その事を知らない指揮官は勝利を確信していた


「構わん、情報通りなら簡単には破れんだろう…それよりも他の場所は制圧出来たのか?」


「いえ、そちらもまだ…報告はありません」


「ふん、流石は鬼神と呼ばれる奴が率いる軍、というわけか…だが、流石の鬼神も我々には敵うまいが…あのお方からは油断するなと言われている、伝令だ、追加で兵を1,500、いや、2,000送るように伝えろ」


鬼神…マテウス・イースレット…この国、アスハ王国最強の騎士…その強さは国内に留まらず周辺国、更には帝国、神王国にまで響いている

強さだけではなく彼は優れた軍略家だとも聞く、念には念を入れる必要がある


「2,000…ですか?いくらなんでもそれは過剰戦力では…」


「それならそれで構わん、だが、あのお方の言葉だ、無視はできん…行け」


「はっ!」


「………さて、どこまでやれる?鬼神よ…」


しかし、この指揮官が目にするのは鬼神ではない


ドサッ…


「ん?…おい、どうした?……っ!?な、何!?」


物音がして、振り向くと…先程、増援を指示した伝令が血を流し、倒れていた…


ば、馬鹿な……!!ここは我が軍の中心だぞ!こんな所に刺客?まさか!…いや、だが、これは…


「ギャ!!……」


「お、おい!どうしたんだ!?」


「て、敵か!?お、おい!どんどん倒れていくぞ!」


「何だよ!これ!?」


部隊の至る所で声が上がる、次々に兵は倒れ、1人、また1人と数を減らす


「さて、そろそろいいかな…」


ふと、指揮官の背後から声がした…彼は優秀な類の人物だ、声が放つ言葉を即座に判断、敵とみなす…剣に手を掛け、抜刀しながら振り返り魔法を詠唱…放つ!


「フレイムランス!!!」


「遅いですよ…」


そこで指揮官の命は終わる…誰も、反応どころか視えもしなかった…背後に立っていた男は指揮官が攻撃を仕掛けようとした瞬間に通り過ぎ、首を落とした…


「た、隊長…」


「……よし、暴れようか」


その男は、若かった…いや、まだ子供じゃないか…学生服を纏い、剣を血で濡らし…


その学生を見た兵は悟った…今から自分は死ぬのだと…


「恨んでくれても構いません…僕は…俺は、守るべきものの為この剣を振るう…レイ・ハヤテ…いきます!!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「………あれは…」


戦うレイを見つめる人物がいた…


「そうか、お前はここにいたのか…運命はどこまでも俺達に……」


「如何いたしますか?必要でしたら、私が処理致しますが」


「やめておけ…お前では勝てんよ…」


「それほどですか……失礼致しました」


「それより他の戦場も劣勢な様だ、一時撤退… 気は進まないが奴の策を使う事にする」


「それは……了解致しました…各部隊に通達します」


「強くなったな…レイ…近いうちに約束は果たされるだろう…俺達の望んだ形ではなく…」


「あの騎士を知っておられるのですか?」


「………いや、気にするな、昔の話さ…行くぞ」


「はっ!シン・ラインフォルト様!」

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