ゴブリンとの戦闘
荷物を背負って村を出た。
送り出す人はただ一人。
父さんだけ。
でもそれで良い。
一番送り出して欲しい人に送り出してもらってるから。
「行ってきます!」
「……ああ」
それ以降は振り返らなかった。
振り返ったら――きっと戻ってしまうだろうから。
村を出て、その土を踏み締めて匂いを嗅ぐ。
……これが村の外の空気か。
実際は村から出て数メートルの所だから大して変わらないのだろうが、その空気がもう村には戻れないという事を実感させる。
そしてまた一歩踏み出す。
村から離れていると実感しながら。
空気が変わっていくと実感しながら。
また一歩、また一歩と歩く。
ルナシャの側まで歩き、一度頭を下げる。
「どうか、安らかに眠って下さい」
中に眠っている冒険者の人達とももう会えないだろう。
だから、最後に別れを言っておきたかった。
「では、さようなら」
人でもない相手に相手になにやってるんだろうと思いながらまた歩く。
……そして約一時間ほど歩いたくらいだろうか? 整備された道に出た。
と言っても、ちょっと草が刈られて歩きやすくなっているだけだが。
「これを
その町の近くにダンジョンでもあれば良いのだが。
じゃないとこのシャベルを使う機会が殆ど無くなるだろう。
それは嫌だからできれば近いところに行こう。
そう思いながら道を歩く。
そして30分ほど経つと、遠くの方にゴブリンの群れが見えた。
「あんな所にゴブリンが……バレないと良いんだけど」
そのまま歩いて行く。
しかし……
「ギギィ!」
気付かれた!?
いや、先程見つけた奴らには気付かれてない。
つまり――
「ギギギギィ」
別の奴だ。
シャベルを構える。
毎度思うのだがシャベル一本で魔物と戦うというのは中々大変じゃないか?
でも今はこれしかないし、これは母さんの形見だから、きっと守ってくれる。
そう思いながら左に駆け出す。
ゴブリンも反応して持っていた剣で斬りつけようとするが、避けてシャベルの側面でゴブリンの顔面をぶっ叩く。
一応このシャベルはとても硬い素材で出来ているらしい。
だからゴブリンの顔面を叩くくらいでは壊れないだろう。
ゴブリンは折れた鼻を触って
「ギギガァ!」
と怒って来た。
まあ当然だ。
「ごめんなさい! でも殺されるのは困るので!」
そう言って更にシャベルで攻撃しようとする。
そうはさせまいとゴブリンも剣を振りかざすが……
もう少しで攻撃が当たる所でピタッと止まる。
先程避けた時に剣のリーチは把握してある。
だからそのリーチ外ギリギリで止まって攻撃が当たるまでの時間を最小限にする。
そして今度はシャベルの鋭い方を首に向かって斬りつける。
「ギャアガァ!」
首から血が飛び、そのまま倒れる。
「……ごめん」
【墓作り】を発動する。
『ゴブリン ここに眠る』
という文字を彫られた状態で墓石が出現する。
そしてシャベルで穴を掘る。
ゴブリンからしてみれば自分を殺した凶器で掘られた穴に入れられるから嫌かもしれないが、掘る道具がこれしかないので勘弁してほしい。
穴を掘り終わってゴブリンの亡骸をゆっくりとその中に入れる。
そして穴を埋めてその上に先程作った墓石を乗せる。
「よし、行くか」
そう言って、また道なりに進んだ。
村民全員から嫌われている墓守、死んでしまった冒険者達の為にどんな所でも墓を作る 鬼来 菊 @kikkukiku
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