第3話 可愛らしい姿
食卓を見ると、鮮やかな料理皿が数枚並べられている。
庭で育てている芋を使ったサラダや、根菜とその葉を煮込んだスープ、干し肉、とても節約しているとは思えないほどの出来だった。
これを毎日作ってくれる妹には、感謝してもしきれない。
「何ボーッとしているの? 早く食べないと冷めちゃうわよ」
「ごめんごめん、」
僕はスープに手を伸ばし、一口目をすすった。
すると、
「キュウ!キュウ!」
白いトカゲは、ご飯をもらうため前足を一生懸命に上げてアピールする。
「待って、いまハクちゃんにもあげるから。」
「ハクちゃん?」
僕は妹が言った可愛らしい名前をリピートした。
「この子の名前よ、白いし、キュウって鳴くからぴったりじゃない?」
「すごくいいと思う、僕もそう呼ぼうかな」
互いに納得し、名前が決まったところでハクに葉物の野菜を与えてみる。
「シャク、」
ハクは一口目を口に含んだあと、二口目を口に運ぼうとはしなかった。
「やっぱり肉食なのかな?」
「そうなると、少しエサ代が高くついちゃうかも、」
その後ハクは、なんとか口に含んだものを飲み込んだが、あまり美味しそうな様子ではなかった。
「キュウ!!」
するとハクはいきなり僕の手に飛びつき、豪快にかぶりついた。
「っ!」
「お兄ちゃん!」
僕は急いでハクを引き剥がそうとするが、なかなかに歯が食い込んでいた。
「ゴクッ」
ハクはとても幸せそうに僕の手に噛み付いている。
「まさか、吸血してるのか!?」
無理に剥がそうとするとかえって危険かも...
僕は、ハクを無理やり剥がそうとせずに、そっと見守ってみた。
5分ほど経ち、ハクは満足気に僕の手から口を離す。
「ペロっ」
噛み付いた傷口を丁寧に舐めるハクは、丸まって眠ってしまった。
「お兄ちゃん、絆創膏!ってあれ?」
妹は慌てて絆創膏を貼ろうとしたが、僕の手には傷口がなく、キョトンとしていた。
「...なんか、不思議な子を拾って来たね、」
「なんか、ごめん。」
僕は妹に謝る。
妹は頭を横に振りながら、
「いいよ、お兄ちゃんが拾ってきた子だし、きっと大丈夫だよ!」
「...ありがとう」
その後は、残りのご飯を仲良く食べる二人だった。
...
「じゃあおやすみ」
「おやすみ〜」
妹が目をこすりながら寝床につくと、僕は部屋の明かりを消し、ぐっすりと眠っているハクをクッションのうえに移動させ、僕も寝床につく。
その日の夜は赤ちゃんのようにぐっすりと眠ったのだった。
(娘を頼んだぞ)
「はっ!!」
急いで上体を起こすと、顔に日差しが入り込んだ。
すごい寝汗だ、それに何か変な夢を見てたような?
僕はとりあえず起き上がり、腕を天井に伸ばし上げた。
スルッ
何やら衣服が床に落ちる音がした。
目線を下にそらすと、自分の素足が丸見えの状態でズボンが脱げ落ちていた。
「あれっ、なんだか体が縮んだような...」
それに声の響き方もいつもより高い気が...
僕は、寝床の隣にある姿見の前に立つ。
「...だ、だれ?」
そこには、自分の見た目とはかけ離れた細身で可憐な女性が立ち尽くしていた。
Summoner Book riakis @riakis
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