第2話 真っ白な家族
「ま、まぁ別にお金は取られてないし、損はしてないよな...」
そうつぶやくと僕は、手のひら収まった白いトカゲを眺めてみた。
「キュウ?」
可愛らしい声で鳴き、つぶらな瞳で僕を見ている。
どうやら警戒はしてないようだ。
むしろ...
「キュウ♡」
その白いトカゲは、なつくように僕の指に頭をこすりつける。
「か、かわいい...」
...
「お、戻ったね、」
「お疲れ様です」
事務所に戻った僕は、店長に挨拶をする。
「今日は少し遅かったけど、大丈夫だった?」
「はい、大丈夫です」
僕は仕事の報告を済まし、荷台を片付けに行った。
「はい、これどうぞ」
「はい、ありがとうございます」
僕が戻ってくると、店長が給料の僕に手渡してくれた。
「あれ、?」
よく見ると、貨幣が3枚ぐらい多い気がする。
「あぁ、それはボーナスよ。今日は荷物が多かったからね」
僕は少し戸惑う。
「え、いいんですか?」
「いいのよ、あなた最近頑張っているから、」
それを聞いて、僕は素直に嬉しかった。
「それに、元気なさそうだったし」
「...え」
僕は、少し固まり店長の方を見る。
「そんなにわかりやすかったですか?」
「えぇ、少し落ち込んでいるように見えたわ。なんか心配事があるなら相談乗るわよ」
店長さんに気を使わせちゃったかな、
大したことじゃないのに...
「いえ、大丈夫です。心配してくれてありがとうございます。」
「そう? じゃあ、明日もよろしくね」
「はい! ではお先失礼します」
店長は笑顔で手を振りながら、事務作業へと戻った。
...
「もう出てきていいぞ」
「キュ?」
僕は胸元のポケットの開き、こいつの顔を外に出してやった。
放っておけないから連れて来たけど、餌代とかどうしよう。
そんなことを考えていると、あっという間に家の近くまで来てしまった。
妹にどう説明しよう、今でも節約して頑張ってくれているのに、生き物を飼うなんて...
「認めてくれないよなぁ」
「キュ?」
まぁ、そうなれば冒険者でも始めて、もっとお金を稼げばいいか...
考えをまとめ、あと少しの帰路をゆっくり歩いていった。
...
「ただいまー」
「あ、おかえりー、お仕事お疲れ様」
ドアを開けると、妹のリコが笑顔でこちらに駆け寄ってきた。
「ご飯できてるから一緒に食べよ」
「リコ...ちょっと話があるんだ」
僕はなるべく深刻な雰囲気にならないように話し出そうとする。
「どうしたの?」
「あの、」
「わぁ、何この子!」
妹は僕の胸ポケットに顔を近づけ、目を輝かせながら白いトカゲを凝視していた。
「実は、こいつを飼いたいんだけど...」
僕は思い切って話した。
「いいんじゃない」
そう言うとリコは、白いトカゲの頭を優しく指で撫でる。
「え、いいの?」
意外な答えが返ってきて、一瞬実感が湧かなかった。
「いいの!こんなかわいい子放っておけないじゃん」
なんだか妹までに気を使わせちゃったかな。
ははは、
「ありがとう」
僕がそう言うと妹は優しく微笑んだ。
「じゃあ早速、この子と一緒にご飯にしましょ」
そう言うと妹は、僕の胸ポケットから白いトカゲを取り出し、手のひらに収めた。
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