第2話 僕は・・・
僕は今、不思議な体験をしている。
体が宙に浮き自分が浮いている。
そして、君と初めて会った日に戻って
僕と君を上から眺めているのだ。
僕は、君を初めて見た瞬間から
恋に落ちていたんだと思う。
君とのお見合いは、
両親同士で決めたものではあったが
僕にとっては最高の結果になっていた。
君はどうだったかな?
初めて君と話した時は、
緊張でどうにかなりそうだったよ。
何を話したかも覚えていないくらいだ。
そんな僕たちを上から眺めているのは、
不思議な気持ちだけど
僕は、顔が真っ赤だね。
僕とは対照的に、
君は落ち着いているね。
清楚な顔立ちに凛とした立ち振る舞い、
相も変わらず綺麗な君に
僕は惚れないわけがない。
お見合いの後は、
とんとん拍子で結婚が決まり
一緒に住み始めたね。
夫婦になってからも、
僕の一歩後ろを歩き、
夫を支える良き妻で
穏やかな性格、
その姿に、前にもまして惚れていったよ。
でも、できれば隣を歩いて欲しかったな。
僕は、家で君が待っていると思うと
仕事が終わったらすぐに急いで帰っていたよ。
家に着くまでが楽しみで仕方なかった。
今、上から見ているこっちまで
君に会いたくなってしまうよ。
そして家に着き、
「お帰りなさい」
その一言で、疲れも吹き飛んだことを思い出すよ。
君は、相も変わらず凛々しかったね。
いつも変わらない君の姿は、
大好きだったし、
愛おしくてたまらなかった。
恥ずかしかったけど
僕の心の想いは、
なるべく口にするようにしていたんだ。
僕の想いを伝えても
君はいつも、そっけなく
はぐらかしていたね。
僕の想いはちゃんと伝わっていたかな?
子供ができた時も
そして産まれた時も
僕は、泣いて喜んで
君を困らせていたね。
君はすごいよ。
こんなに可愛い天使を産んでくれたんだから。
君と一緒に子供たちを育てることができて
僕は、最高に幸せ者だよ。
それからは、
これまで以上に
君への想いも伝えるようになったね。
僕は、どんどん君を好きになっていったよ。
本当に幸せ者だ。
この頃になると君は、
そっけなくはあったけど、
少し恥ずかしそうに
はぐらかしていたね。
子育ては大変だったけど
君の方がもっと大変だったと思う。
僕より先に起きて朝ごはんと弁当を作り、
子供たちの世話、それから家事を済ませ
夜も僕より先には寝なかったね。
良き妻、良き母でいる努力を怠らない君には
頭が上がらない思いだったよ。
本当に感謝の気持ちが日々強くなっていったよ。
それから
あっという間に子供たちは、
巣立っていったね。
また、二人だけの生活にが始まったね。
君と二人で買い物に行ったり
散歩に行ったり、心が弾んだよ。
旅行に行った時は楽しみで眠れなかったよ。
僕は毎日、
君と過ごせる日々を本当に幸せに思っていたよ。
君も、僕と同じ気持ちでいてくれたかな。
きっと同じ気持ちでいてくれたよね。
それから、
子供たちにも愛する人ができて
結婚して孫まで見せてくれたね。
頻繁に遊びにも来てくれて、
君と一緒に孫の世話までできるなんて、
僕は、なんて幸せ者なんだろう。
二人の生活に戻ってもからも
いつまで経っても君は美しい。
凛とした佇まいにも磨きがかかって
君の魅力が増しているよ。
僕もこの頃になると
君への想いも、毎日のように伝えていたね。
そして昨日も
「愛しているよ。
僕は、君と一緒になれて本当に幸せ者だ。
生まれ変わっても
君とまた一緒になりたいなぁ。」
なんて事まで言ってしまったね。
君は、
いつものように恥じらいながら、
はぐらかしていたね。
顔は赤くなっていたから
同じように思ってくれているのかな。
僕の想いが
ちゃんと伝わっていればいいな。
君も、僕と同じで
幸せだって思っていてくれていればいいな。
やはり僕は、
君を残して、先に旅立とうとしていたんだね。
不思議な体験だったから
なんとなく、
そうなのかなって思っていた。
走馬灯ってやつだね。
僕はちゃんと、
君を幸せにできていたかな?
僕は、幸せだったよ。
君と出会えて。
君と結婚できて。
君と家族になれて。
君と最後まで一緒にいられて。
本当に幸せだった。
僕と出会ってくれて本当にありがとう。
僕にとって、
君と過ごした日々は宝物だよ。
神様には、本当に感謝しかないよ。
でも、
最後まで君からの言葉は聞けなかったね。
それだけが少し心残りかな。
だから、
先に旅立つけど、
少しだけ見守る事ができるみたいだ。
だから、
もう少しだけ、
君を見ていてもいいかな?
僕がいなくなってからの君は、
見ていられないくらいに憔悴していたね。
不謹慎だけど、嬉しい気持ちと
僕には何もしてあげる事ができないことの
歯痒い気持ちだけが残ってしまうよ。
子供たちに支えられている君が
痛ましくて見ているのが辛いよ。
だから、
どうにか立ち直って、
いつもの凜とした姿を取り戻してほしいな。
少しずつではあるけど
上を向けるようになってきたのかな。
もうすぐ僕も行かなければならない。
時間が来たみたいだ。
僕は、君のことが心配だよ。
僕の仏壇の前で座る君から声が聞こえてきた。
なにか話しているのかな。
最初は聞こえなかったけど
だんだんと聞こえるようになってきた。
僕は、涙が止まらなかったよ。
君も、同じ想いでいてくれたんだね。
僕の想いは、ちゃんと君に伝わっていたんだね。
君のことを、ちゃんと幸せにできていたんだね。
こんなに嬉しいことはないよ。
僕は、本当に幸せ者だね。
「先に行って君のことをずっと待っているから、
今度は君の口からその想いを伝えてね。」
君には、聞こえてないと思うけど
僕はずっと待っているからね。
それからどのくらいたっただろう。
この時をずっと待っていた。
僕の元へ走って向かってくる一人の女性。
出会った時とずっと変わらない、
僕が恋焦がれ、
愛してやまない一人の女性が、
走ってきた勢いそのままで、
僕の胸に飛び込んできた。
そして僕は、
君を受け止め
強く、抱き締めた。
君は、
目に涙をいっぱい溜めながら
僕が一番、
聞きたかった言葉をくれたね。
「私もあなたを愛しています。
私もあなたと一緒になれて本当に幸せでした。
だからまた、
あなたと一緒になりたいです。
これからもずっとずっとあなたと一緒がいいです。」
後悔の先に ya_ne @ya_ne
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