最終話:世界最強の大聖女?

「フレイヤちゃんの勝利を祝って……かんぱーい!」


 ジークを倒した私たちは、近場のレストランにて勝利の宴を開いていました。 

 お祈りはもう捧げた後なので、自由にいただくことができます。


「さぁ、フレイヤちゃん! 今日は私がおごるから好きなだけ食べていいよ!」

「ありがとうございます、るかたんさん。では、お言葉に甘えまして……」


 メニューにはおいしそうなお料理ばかりでわくわくしますね。

 白身魚のムニエルに、霜降り肉のワインソース仕立て……どれもこれも食べたくて仕方がないです。


『あまり軽はずみなことは言わない方がいいフェンよ。フレイヤはとにかくたくさん食べるフェンから』

「ははは、大丈夫だよ。お金ならたくさんあるから心配しないで」

『僕は言ったフェンからね』


 ルーリンさんたちが小声で話していますが良く聞こえませんでした。

 さて、店員さんがいらっしゃったので注文いたしましょう。

 

「ここからここまで20人分ずつください。残りはまた後で注文します」

「わかりました。少々お待ちください」

「え……? 20人分? しかも残りって……」

『だから言ったフェン』


 お料理がどんどん運ばれてきます。

 るかたんさんはなぜか唖然としたお顔ですが、お料理が冷めてはよくありませんからね。

 ありがたくいただきましょう。

 ハムッと牛さんのステーキを頬張ると、お口の中にじゅわぁっと旨味が広がりました。

 ふむ……美味ですね。

 残りの全てを一口でいただこうとしたら、頭の中にあの声が聞こえました。


〔チャンネル登録者が100万人に達しました。おめでとうございます!〕


 すかさず床に跪きました。


「神様っ!」

「ど、どうしたの、フレイヤちゃん!?」

『お祈りの時間だフェン』

「さっきやらなかったっけ!?」


 周りの方々が私を見ていますが、そんなことは別に良いのです。


〔100万人記念のチャンネル登録ボーナスは特別です。80万人と90万人ボーナスと併せての進呈になります。どうぞお受け取りください〕


「はいっ、ありがたき幸せですっ」


 レストランの天井が黄金に輝き、ドスンッ! と何かが落ちてきました。



◆――――――――◆


【現へ繋がる扉“リアルゴー”】@チャンネル登録者1000000人達成ボーナス。

・アイテム分類:不明

・ランク:SSS

・効果

〔一日に一回だけ現実世界と往来できる〕

・説明:現実世界へと繋がっているゲート。


◆――――――――◆


 アーチ状の黒い扉です。

 材質は木でしょうか、それとも金属でしょうか。

 どっちにでも見えますね。

 開きたくなりましたが止めておきます。

 今回もよくわからないお恵みですが、ありがたくいただきましょう。


「フ、フレイヤちゃん……そのアイテムはいったい……」

「神様のお恵みです。今仕舞いますね」


 門は意外と軽く、ポーチにデロンッ! と収納できました。


「お騒がせしました。では、お食事を再開しましょう」

「う、うん……」


 やたらとお財布の中身を確認している、るかたんさんと一緒にお料理を堪能していたら、ドカドカドカっと見知らぬ人たちが近づいてきました。


「あんたがウワサの激強聖女か! あんたのおかげでまたこの世界に来れたぜ! 礼を言わせてくれ!」

「ありがとう! 本当にありがとう!」

「あなたがいなかったらもう引退するしかありませんでした!」


 そのまま、私たちはわらわらわらと囲まれます。

 皆さん、何やらとても体つきが良い方々ですね。

 あなたたちはどちら様で……と尋ねようとしたら、中央にいた男性が名乗りました。


「俺はオンザーってもんだ。よろしくな」


 オンザーさんは右目に大きな十字傷があり、髪は短い茶色でした。

 腕も足も筋肉が盛り上がり、お三方の中で一番体が大きいです。


「私はユナー。よろしくね」


 こちらは女性の方でした。

 美しい碧色の髪に、同じく碧色の瞳が爽やかな印象です。


「僕はキャトルという者です。以後お見知りおきを」


 最後の人は長い黒髪の男性で、黒曜石みたいな瞳が美しかったです。

 皆さん剣や盾も身につけているので、もしかしたら冒険者かもしれません。

 ルーリンさんがプルプル震えながら呟きました。

 

『こ、この人たちは誰フェンか……? ぼ、僕は食材じゃないフェンよ……』

「ごめんごめん、言ってなかったね。この人たちは“Reason to LoVe プロダクション”に所属している私の友達。みんなBANされてたんだけど、フレイヤちゃんのおかげで復活できたんだ」

「なるほど……そうだったのですかぁ。私はフレイヤと言います、どうぞよろしくお願いいたします」


 彼らと握手を交わします。

 りーずん……何とかとは、チームの名前みたいでした。

 かっこよくて羨ましいです。


⦅お、おい、この人たちリーズンのエースじゃん⦆

⦅やばっ。激熱過ぎる⦆

⦅この面々はすげえ⦆


 やはり、チーム名がカッコいいため神様もざわついていました。

 さておき、自分の行いが人々を救ってくれていたようで、私は心底嬉しかったです。

 日々の行いは微々たるものでも、継続すれば大きな力となる……。

 心の中で一人納得していたら、不意に、るかたんさんが話し出しました。


「ねぇ、フレイヤちゃんはこれからどうするの?」

「ええ、祈祷の旅を続ける予定です。困っている方々はたくさんいらっしゃいますので。私は全ての人を救済したいのです」

『フレイヤは志が高くてすごいフェン』


 祈祷の旅に終わりはありません。

 私はまだまだ修練を積まなければならないと思っています。


「そうなんだね。あの、一つ提案があるんだけど……」

「はい、何でしょうか」


 おもむろに、るかたんさんはもじもじしながら言いました。


「良かったら……私たちのメンバーに入らない?」

「私が……るかたんさんのお仲間にですか?」

『それは良い話だフェン! フレイヤ、仲間になるフェンよ!』

 

 ルーリンさんは大喜びです。

 もちろん、私も嬉しかったですが、こんな大人数で祈祷の旅をしても良いものでしょうか。

 ……やはり、神様のお言葉を聞いてみましょう。


⦅マジか!? すげえ!⦆

⦅とうとうフレイヤたんがリーズンの仲間に!⦆

⦅こりゃぁおったまげたよ……⦆


 どうやら神様も大盛り上がりみたいです。

 るかたんさんのお申し出は快くお受けしましょう。

 

「ど、どうかな?」

「ぜひご一緒したいです」

「やったぁー! ありがとう、フレイヤちゃん!」

 

 勢い良く抱き着いてくるるかたんさんに圧倒されながらも、私は嬉しかったです。

 しかし反面、完全に気を抜くわけにはいきませんでした。


「これからも異教徒のボスは探さなければ……」


 この旅を経て、ダンジョンにいる怪物たちはみな異教徒の使い魔であろうことは、ほぼ確定しました。

 人目につかないところなので、勢力を伸ばすのにはうってつけなのでしょう。

 しかし、未だに異教徒の全体像は掴めません。

 ジークは倒しましたが、ボスはヤツ以外にもいる可能性だってあります。

 なおも油断はできないでしょう。


「何か言ったフレイヤちゃん?」

「いえ、こちらの話です」

「フレイヤちゃんがいれば百人力だな! 何と言っても世界最強の大聖女なんだから!」

「それ! 世界最強の大聖女がいれば何でもできるって!」

「世界最強の大聖女と仲間になれるなんて、僕は本当に幸せ者ですよ!」


 あっはっはっ! とレストランは笑い声に包まれます。

 が、私には気になることが一つだけありました。

 世界最強の大聖女?

 世の中にはそんな強い聖女様がいらっしゃるのですか。

 まぁ、私のことではないですね。

 断じて武闘派ではありませんから。

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外れスキル【ライブ配信】で追放された底辺聖女ですが、“視聴者”という神様が助けてくれて、うっかり世界最強の大聖女になりました~私以外に祈る人がいなくなった国は、神の加護を失い破滅しました~ 青空あかな @suosuo

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