第61話「バラしても良い?」


「俺に言わせれば同罪だな」


 そう言い切ったロンは、少しだけ切なそうに微笑みました。

 魔族とは言っても実の弟ですもの。複雑なんでしょうね。


「ジフラルトの奴の事は、まぁそんな感じだ。大体は分かって貰えたと思うが、ジフラルトさえ仕留めればとりあえずは良いだろう」


「そうだね、とにかく次はジフラルトを倒す。ま、分かりきってた事だよね」


 まぁそうですね。アレクが言う通りです。

 そして、一人立ち上がったアレクが皆んなの顔を一人ずつ順に目で追って、さらに口を開きました。


「うん、ここにいるメンバーなら大丈夫。ロン、?」


「ああ、構わない」


「そうですね。もうその方が良いように思います」


 アレクもロンもリザも、なんだか同じ意見の様ですが、バラすって…………アレを?


「なんでぇ。何をバラすっつうんだ。まだなんかあんのかよ」

「それがあるんだ――」


 ほんの少し、一拍だけ溜めたアレクが続けます。


「――実はここにいるロン・リンデルは、


 ………………


 ……沈黙です。でしょうねぇ。


「……オメエな〜にを言ってんの? さすがに無理があんだろそれは。なぁ?」


 ジンさんがそう言ってキョロキョロと辺りに視線を遣りましたが、同意を示したように頷いているのはカコナ唯一人です。


 レミちゃんとボラギノ女史は、逆に腑に落ちたような顔をしてらっしゃいます。


「ん? なんでぇ、オメエら信じんの?」


「なんとなく納得」

「……そうね。なんとなく納得、が一番しっくり来るかしら」


 そうかも知れませんね。

 ロステライドへ潜入と言ったって、詳しすぎるきらいがありますし、ロンにはどことなく普通の男性とは異なる雰囲気がありますものね。


「おばあちゃんも居てるんでしょ? 出ておいでよ」


 あら、私もお呼びですか。

 ジンさんとボラギノ女史は初めてですけど、では少し失礼しちゃいましょうか。


『私に何か御用ですか?』


「御用って事はないんだけど、ロンがデルモベルトだっておばあちゃんも知ってるんだろうなって思ったからさ。これで全員だなって」


 そうなりますね。

 元々知っていたロン、リザ、アレクと私に加えて、ジンさん、レミちゃん、カコナにボラギノ女史の八人ですね。


「え? それじゃあ……、こないだの森で出たデルモベルトのお化けは……?」


「あれは俺だ。アレクとひと芝居打っただけだ」


 ひと芝居って言ったって、学芸会レベルの大根役者二人がゴソゴソやってただけですけどね。

 思い出したら笑っちゃいますよ。



「ちょっと待て。とにかく分かる様に説明しろって」


 代表してアレクが順を追って説明しました。


 元々デルモベルトに他種族を侵略する意図はなく、『トロルの腕輪』を使って人族に化けて人族領をうろついていた事から始まって――


 ――アレクに斬られて魔王デルモベルトとしては死に、装備していた『トロルの腕輪』に記憶されていた人族ロン・リンデルの姿として再生を果たし、マナの濃い場所でのみデルモベルトの姿を取り戻すこと――


 ――それをアレクとリザだけが知っていたこと。


 まぁ私ももちろん知ってましたけど、覗き見ですから敢えて言及しなくても良いですよね。



「……ん。まぁ、よく分かんねえけど分かった。分かったけどよ、オメエは良いのかよ? オメエのが元魔王だぜ?」


 ジンさんがレミちゃんに向かって、を立ててそう投げ掛けましたが、それに対してレミちゃんは即答です。


「良い」


「良いんかよ。すげーな」

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