第43話「若い娘の話題はいつだって」
翌早朝、ウルの長姉ボラギノ女史が王城へ現れ、昨日の件の謝罪がしたいとの申し出がありました。
キスニ姫が暴言を吐いた相手、リザがこの国の姫である事を聞き及んだのでしょうね。
普通に国際問題ですもの。
「姫様よ、どうすんだ? 婆ぁが追い返すか?」
「そんなのダメよジル婆や。ここへ通して差し上げて――」
と、リザが言いかけたところでレミちゃんがそれを阻止。
「キスニは? ボラギノ一人だけ?」
「うんにゃ二人だ。けどもう一人は男だぞ」
ちょっと太めの指を二本立てたジル婆やがそう言ってみせました。
「ノドヌね。どう思う?」
「ノドヌってあれだよね。ジン様に介抱されてたバルク的にはちょっと物足りないけど良いカットしてそうなお兄さん…………うぐぐぐ」
未練がありありと見て取れますね。
「うぐぐぐ……会ってお話したいけど! ダメよ!
「だよね」
カコナとレミちゃんがハイタッチ。
そして揃ってジル婆やに言います。
「「追い返して」」
「わぁった。任せとけ」
国際問題なのは間違いないのですから、そんな安易に追い返して大丈夫かしら、と思わなくもないけど、まぁ、私も同じ気持ちですから良いとしましょうか。
そして三人は準備を済ませ、西門を潜り抜けて一路魔の棲む森へと向かいました。
ちなみに私はスケスケのままで同行はしていません。いつも通りに意識のみで追い掛けているカタチですね。
そう慌てる行程でもありませんからね、三人はのんびり進んで行きます。
それなりに魔物も現れはしますが、前衛リザ、後衛レミちゃん、応援カコナ、で上手に機能していますね。
初めて組んだパーティとは思えませんよ。
すっかり打ち解けたせいですかね。
けれど基本的にはただただ歩くだけなので結構余裕もあるみたいで雑談は非常に多いようです。
若い娘が三人も揃うと話題はいつだってそう。これは古代からずっとそうですね。
偏見だって怒られるかしら。
まずはカコナのターン。
「やっぱさー、ワイルドな感じとあの良い感じのバルクっぷりが良いんだよねー」
「この間アレクが言ってたのはカコナだったか。紹介する?」
「え、良いの!? なんかアレクちゃんは無駄だって――」
「一旦それは忘れて。バカジン、紹介して欲しそうだったし」
そしてレミちゃんのターン。
「とにかく綺麗。顔だけじゃなくて、体のどこをとっても綺麗。瞳も唇も指先も綺麗。……もしあの指先であんなトコ
一応言っておきますけど、まだ全然二人の間に何も起こっていませんからね。
ふふふふふ、のところ、妄想ですよ。
「ちょっとレミさん! 真っ昼間からもの凄い顔してらっしゃいますよ!」
「良い。ロン様に見られなければ」
先ほどのカコナとは違って、なんだかまだはっきりしていないとは言っても、ロン本人の
二人とはちょっと立場が違いますものね。少し言葉に貫禄がある気がしますよ。
「で! リザ姫さまのアレクはどんな感じ?」
「えっ! わたくしもするんですか!?」
「当然」
「……そ、そんなっ……急には……」
ちょっと間を取りながらそんな事を言うリザですが、その『間』のあいだに色々思い浮かんだ様で赤面し、掌で覆ってしまいます。
まぁね、なんだかんだで意識しまくりでしたからね。
「ほれほれ。アレクのどんなとこが好きなの。恥ずかしがらんと言うてみ?」
カコナが酔っ払ったオジサンの様に絡み――
「違う。
――レミちゃんが話しやすい様な質問に軌道修正。
これならリザでもするすると答えてしまいそう。
うーん、良いコンビですね。
「第一印象……、初めてアレクにお逢いしたのは昨年の
ずいぶんと前にちょっと説明しましたが、猿の月は皆様の世界で言うと九月ですね。
このあいだ兎の月から月を跨いで今は五月にあたるドラゴンの月です。
「うんうん、それで?」
「一目見て……。言いにくいですけど、ロンの事を思い出しました。あ、いえ、ロンを忘れていた訳ではないのですけど」
「……? なぜロン? 特に似てるとは思わない」
ロン好き好き大好き超愛してる、なレミちゃんは美少年愛好家としての顔も持っています。
なんとなく腑に落ちなかったんでしょうね。
「似てはいないんですが、あれほど綺麗な男性はロンしか知りませんでしたから」
「納得。完全に腑に落ちる」
今、リザが世界中の人族の男を二つのグループに分けるとしたら、
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