第44話「元の姿に戻れない訳じゃない」
「第一印象はかなりの好印象」
「そうなの? ワタシだって初めてアレクちゃん見たとき、綺麗な子ねー、って思ったけど?」
「ロンを思い浮かべるほど。これは相当凄い事」
レミちゃんなりの理屈ですが、なんとなく筋が通っている様に思える程に、確かにロンとアレクは綺麗な男なんですよ。
「それで最初にアレクを意識し始めたのは?」
「……それは、その、多分ここです」
「ここ?」
三人は今、日暮れまでに余裕を持って辿り着いた、森の手前の簡易拠点。朝早く出発した甲斐がありましたね。
「わたくし達トロルナイツの先導で魔の棲む森を案内した時、です」
「あの時? 何かあった?」
「いえ、特に何が、という事はないんですけど……」
ここにいるレミちゃんを含む勇者パーティが魔王デルモベルト討伐に出た際、少しでもアレクたちの疲弊を避ける為に、極力リザたちが森の魔獣や魔物を相手取って進んだんでしたね。
「戦斧を振り回すわたくしを、ですね。じっとアレクが見詰めるものですから……自意識過剰と分かっていながら……つい意識してしまって……」
「アレクはその時からリザ姫にぞっこん」
「そうなの!?」
「そう。本人が言ってた」
ボスンっとリザが頬を染めます。
奇しくも同じ頃から意識しあっていた二人だったのですね。
三人は拠点で夜を明かし、明日は魔の棲む森ですね。
ガールズトークを眺めているのも楽しいですけど、意識を
◆ ◆ ◆
「ニコラ爺やさん! リザは目を覚ましたの!?」
「おぉ、覚ましたらしいぞ。さっきジル婆が紅茶を淹れにきたときにそう言うておった」
「……そっか、良かった……」
昨夜の様子です。
キスニ姫の
ちなみにリザを運んだのはアレクですよ。
お姫様抱っこでリザを運ぶアレクがね、この間の
待機していたメンバーは、アレク、ロン、ジンさんにウル姉弟の二人です。
キスニ姫はアネロナの護衛に連れ去られたままなので不在ですね。
もし居てもアレクに追い出されそうですけどね。
「アレックス、一体どういう事なのです」
「……なにが?」
アレクの声音は普通っぽいですけどね、無茶苦茶怒ってますよ、コレは。
纏う雰囲気がピリピリピリピリしてますもの。
しかし、アレクの育ての母であるボラギノ女史はそんな事では
「先ほどのトロル女性です! まさかアイトーロルのエリザベータ姫だなんて――」
「――うん、さっきのトロル女性は
「――愛して、って……アレックス! 貴方はまだ十二歳ではないですか!!」
静かに怒るアレクに対し、感情を露わに怒るボラギノ女史。
私が思うに、どちらが正しいとか正しくないとか、そういう話ではありません。
実際アレクは十二歳だし、ボラギノは保護者ですものね。
「十二歳だからなに? 十二歳の僕は、
「…………貴方、まさか反抗期ですか?」
その場にいた全ての者が一瞬首を捻りましたが、アレクの歳ならそうかも知れぬと全員が首を真っ直ぐに戻しました。
「反抗期? そうかも知れないけど……僕は、これだけは譲らないよ。僕が好きなのはキスニじゃない、リザだけなんだ!」
……言いましたね、アレク!
これほどに美しくカッコ良い少年は私でさえ見たことがありませんよ。
「……落ち着きなさい。エリザベータ姫と言えば二十四歳、貴方の倍。肩幅も倍、体重は恐らく三倍近くはあるでしょう。それでも貴方はキスニツプヤ姫よりエリザベータ姫を選ぶと言うのですね?」
「僕はリザを選ぶよ。リザの顔も髪も、顎も筋肉も性格も、全てが好きなんだから」
そんなこと言う十二歳いますか!?
この私だって生前そんな事を言われた事なかった様に思いますよ!?
……すみません、少し取り乱しました。
「姉上、アレックス様の意思は硬いようでござる」
「そうだぜボラギノ。こいつずっとでっかい姫さんのでっかい尻ばっか追いかけてんだから。諦めてよ、オマエも子離れして男でも探せ。ちなみに俺だってフリー――」
「……男一人に女の人一人……か。なるほど、タメになる」
ノドヌさんにジンさん、そしてロンがそれぞれ今のやり取りに対して口にしました。
ロンだけは独り言ですけど、うん、そうやって一つずつ学んでいけば良いと、私なんかも思いますよ。
レミちゃんのタメにもね。
けれどアレですね。
アレクは今のままのリザをこんなに好いてくれているんですから、変身なんてホントは必要ありませんね。
もちろん、
アレクたちはその後、『姫さまも娘っ子どもももう寝た! おめぇらもさっさと
アレクだけはなかなか王城を離れませんでしたけどね。
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