思ったこと
藤川 成文
第1話
春の温かい日差しの中、私は電車を待っている。ホームは吹きさらしで、汗ばんだ肌に風が心地よい。
真っすぐ前を見るとホームの向こうには町の風景が広がっている。あの郵便局はこの前母と行ったところだなと思った。コンタクトはすごい。何でも見えるんだ。コンタクトをする前は眼鏡をかけたくなくて見えない世界で暮らしていた。
だって眼鏡ってなんだかダサい気がする。度が入っていると目が小さく見えるし余計に嫌だ。
コンタクトをつけるようになって人を見つけやすくなった。だからあの子かなって心配はしなくてすむ。間違えて話しかけることほど恥ずかしいことは無い。なんだか性格まで明るくなった気がする。高校生の時は、コンタクトは痛そうで怖かったし、メガネはダサいしで何もしていなかった。
そしたら、遠くが何も見えない。ぼやけてまるでこれからの人生みたいに見えなくなるんだ。クラスメートが部活中に目を怪我したときがあった。その子はソフトのレンズをつけていたけど、ハードだったら失明していたかもしれなかったらしい。
それを聞いたらより一層コンタクトが怖くなったんだっけ。そんなことそうそうないなぁと今になって思う。
早くコンタクトをつけていればよかったと今は思うけど、コンタクトをつけるようになってめんどくさいこともある。毎日洗うのがめんどくさいのだ。お金もかかるし破けちゃったら新しいのを開けないといけない。
眼鏡ならそんなことはない。レンズが割れたら買いなおしだけど。
これも高校生の時のお話だけれど、1年生の時、文化祭でお化け屋敷をやった。私は驚かす役だった。どうにも驚いてくれなくて、はやる気持ちのまま前に飛び出したら眼鏡を割ってしまった。制服の胸ポケットに入れていたから、飛び出した拍子に眼鏡も飛び出して、それを足で踏んでしまったらしい。
パリンっという音が聞こえた時は、あーやっちゃったと思った。お母さんになんて言おうなんて考えてた。高校生がやるお化け屋敷だからたかが知れてるんだけど、その時はもっと怖がってもらえるお化け屋敷にしなきゃって一生懸命だった。
一生懸命になれることって大人になるとそうそうない。あの時の気持ちを大切にしていきたいし、時々こうやって思い出すことが大切だと思う。
思ったこと 藤川 成文 @cater
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