07 エピローグ
「あぁ……そうか」
帰れないのか。そうかぁ、まじかぁ。
しょっぱい味のドラゴンステーキを頬張る。ちなみに涙で塩辛い。
あぁ、そうだ。味、味ね。
うん、今日はなんかうまく感じるな。
SS級の竜肉だからなのか、それともこちらの世界に身体がなじんできたとかなのだろうか。どっちにしろ、それを確かめるすべはもう存在しない。
「そうだ。どうせなら、こっちにお店でも出したら?」
落ち込む俺に女神がいった。
「店?」
「うん。貴方の料理すごくおいしいから。もっと多くの人に食べてもらいなさいよ。てか、元々そういう予定で連れてきたわけだし」
「店か……」
ぼんやりと、
まぁ、それもいいかもしれないな。
なにせ、ここにはうまいと言って俺の飯を食べてくれるやつらがいる。
向こうでは満たされなかった想い。
こんなにもおいしいと言って、客の笑顔が見られるのであれば。
それはきっと、料理人として一番の幸せなのかもしれない——
「そうだな。店でも始めるか」
——END。
召喚された料理人は、女神から魔王の肉が食べたいと言われ世界を救う 遠野いなば @inaba-tono
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