4 深紅の空を握りしめて

 猟奇殺人犯はこう語っていた。「全国の高校生諸君。お騒がせしてすまないね。でももう大丈夫だ。君たちをすぐに楽にしてあげるよ。」僕は意味がわからなかった。殺人犯が僕らを楽に?冗談も大概にしろ。でも李恋だけは、僕と過ごしてきたはずの李恋だけは反応が違ったんだ。

「ねえ光巧?」

「どうした?」

「この人と一度会って話してみたいわ。」

僕は返事ができなかった。言葉が喉に詰まって、上手く話すことができない。そのうち僕は過呼吸になりかけてしまった。

「光巧?」

「っ、お前は馬鹿なのか?こいつ、殺人犯なんだぞ?!」

「だから何よ。この人だって一人の人間よ。話せばきっと何かを考えがあるはず。」

こいつはいつもそうだ。なんだって意見を聞き、同情し、そして解決策を出して和解する。でも、それが通用するのは普通の人間の話であって、こんな頭が可笑しい犯罪者に通用するよな話ではないことぐらい、頭のいい李恋ならわかってくれるはずなのに。好奇心が勝ってしまった李恋は聞く耳を持たない。

「光巧はさ。あたしが可笑しいやつだって思ってるでしょ。」

「へっ・・・」

唐突に真核をつかれて間抜けな声が出てしまった。

「あたしは真面目に言ってるんだよ。彼も、いや男性かどうかは知らないけどこの人も人間だよ。話ぐらいはできると信じてるよ。あたしは、ね。」

「・・・。なあ李恋。お前は馬鹿なのか?」

「はあ?!あんたっ」

「話は最後まで聞けよ。これからお前がしようとしていることは命に関わる、つまり死ぬかもしれないとても危険なことだ。僕ら高校生が対象となっている猟奇殺人事件。そこに首を突っ込んだら最後。生きて帰れる保証は、ない。」

どれだけ真剣に話そうとも李恋が縦に首をふることはなかった。


 あれから数日後。とうとう僕ら高校生は自宅待機を言い渡された。猟奇殺人事件のターゲットが僕らであること、登下校中の殺人が大半を占めていること、そして事件が1日単位で行われるようになったこと。僕の高校でも殺られたやつがいるらしい。もう夢物語じゃないんだ。そう思うと身体中に冷や汗をかいてしまう。そうして僕らは、生きるか死ぬかのゲームに自ら足を踏み込んでしまった。

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昔日に君想う ヒナセ @hinase08220303

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