世界の意思にさようなら

第153話 当たってんじゃんかよ！

　「お、レオンじゃん！」

「あ、お、おはようございます。コウキ君」

朝、対策課Bの部署に向かう最中、たまたまレオンに出くわした。

「なあ、レオンもツガルのラジオ聞いているんだっけ？」

「えっと、一応聞いています。皆さんこのラジオ番組をお聞きになっていますので、僕だけ話題に入れないのは申し訳ないので……」

「お、おう……」

レオンはそう言った後、廊下の窓の外をボ～っと眺めはじめた。

　やはりこれは恋に悩む少年の悩みか……

　自分はこんな甘い経験をしたことがないのでわからん

「そう言えば昨日のラジオ、最後に樹神教のやつがゲストで来たじゃん！　あれいいのかよって思わない？　仮にも自分ら世界樹対策課に敵対しているヤバい宗教団体だぜ？　一昔前のオウムみたいに何をしだすか、てかもう既にやらかしているんだが！」

「樹神教はそんな場所じゃありません！」

「え！？？」

急にレオンが人が変わったように怒鳴ってきた。

「いいですか？　樹神教とは……」

そのままレオンのありがたーい説教を聞く羽目になってしまった。

ガンギマリのレオンの目はトラウマになるぐらい本気だった。

　おいおい、コイツ洗脳解けてないじゃん……

　ん？　嫌な予感がしてきたぞ

「コウキ君も樹神教に来れば考え方が変わるはずです！」

　はい！　アウト！

　悪い予感が当たってしまった。

「なあ、ちなみになんだけど……サクヤ様って」

「勿論、樹神教の神！　サクヤ様です。コウキ君もあの方にお会いすれば人生が変わります。ぜひ会いに行きましょう！　僕が上の方にお話ししますので！」

　まじかよ……

　ヒカルさんこいつはとんだ事件になってきやしたぜ！

　対策課Bに入るといつも通りの光景が目に入った。

「おほぉおおおおっ!!」

ワルワーラは首に取り付けられているチョーカーからの電撃で、またイカされていた。初めはあまりにも下品過ぎてドン引きしていたが、馴れとは怖いものだ。いまではこのB班の名物、いや日常と化している。自分とヤタは、ご近所に挨拶する時に軽くお辞儀する感じで流した。

「おはようございマス」

「おう、エマおはよう。今日もワルワーラ、やばいことになってんな」

「今日も平和ってことデス！」

「……そうかもな！」

「んほっんほっんほぉ"ぉ"ぉ"」

ワルワーラの喘ぎ声はちょっとしたBGMだ。

　「あの～、ヒカルさんちょっといいですか？」

「あら～♡、もしかしてデートの誘い？」

「いえ違います。あれですよ、あれ！」

ここでレオンの件は言えない、自分はヒカルさんと2人きりで話すために、この場から離れて話そうと思った。ヒカルさんもすぐに気付いてくれたので、自分たちはさり気無く部屋を出た。

「んお"ぉ"っお"っお"ぉ"行ってらっしゃい"いぐっ」

「……お前、いい加減に落ち着け」

　タバコの吸える喫煙室で自分とヒカルさんは入った。

ここなら外に声が漏れることは無いし、誰かが入ってきてもすぐにわかる。そもそもこの喫煙所に入ってくる人はほとんどいない。自分はたまに吸いにここに来るが、今までに2人ぐらいしか会ったことがない程。

「で、どうしたの？」

「まあ、盗聴器で聞いていたかもしれませんが、今朝レオンと出社したんすけど、レオンのやつまだ樹神教と繋がりありましたよ……」

「そう、ダメだったのね。」

ヒカルさんは残念そうな顔を作り出した。しかし、驚いた反応は感じられなかった。この人も薄々は感づいていたんだろう……

「イクエちゃんに診てもらった時、洗脳とは違うモノで縛られてるって言われたから、もしかしたらと思ったけど……。」

「え！？　じゃあ、診断した時既にわかってたんですか？」

「確証は無かったのよ。落ち着きは取り戻せたし、しばらく様子見と言う事で、私が遠くから監視しながら、お尻尾出すか見守ってたのよ。ただ、中々出してくれないからアナタにも手伝って貰ったってわけ！」

「ハア……、ならもう自分の仕事は終りっすね。」

「何言ってるの！　ここからが勝負どころよ！」

「？」

急に熱く語り出してきたヒカルさん、なんか嫌な気がする……

「コウキちゃん、貴方は何とかして樹神教に潜入するのよ！」

「え？」