第7章 開拓地の狂犬

第51話 ツガルのラジオ

 「カラツガルの日本応援ラジオ~」

その言葉の後にOPテーマが流れていく、夜に放送されているからか、静かで心が落ち着く曲だ。


「さて、始まりました。カラツガルの日本応援ラジオ! この番組は私、カラツガルが災害後の日本を元気づけるために、あんなことやこんなことを語り、災害前の日本を取り戻そうという番組です。」


元々はこういう内容のラジオ番組ではなかった。


災害後、テレビやラジオなどのメディア媒体が死んでしまった。ネット環境も上手く機能していないこの世の中だ。世界中の人たちの娯楽が失われ、世の中は真っ暗だ。YouTubeも見れないし、今現状世界がどうなっているのか、人々は知るすべもなかった。


そんな暗雲に一つの光が差し込んだ。ラジオは生き返ることができたのだ。

テレビやYouTube、インスタとかはまだだが、これだけでもいまの人々にとっては救いになっている。まあ、そこらへんはまだまだ時間がかかると言われている。


「いや~、最近寒くなってきましたが、いかがお過ごしですか? 私は避難生活で、多くの方に支えられていただき心はポッカポッカです。ただ贅沢をいうなら……ここラジオ局をもう少し補強してほしいかな~なんて、さっきから冷たい風がいたいです。放送中に火を起こす訳にはいきませんからね。」


司会者は明るく進めていく。僕たちが光を見失わないように……


「いや~でも良かったですよ。皆さん聞いてくださいよ。どうやら世界樹の木の浸食は止まったそうなんです。あとは、どう伐採するかですね。家どのくらい建てられるんだろう……」


 

 嘘だ。


カラツガルは恐らく、嘘の情報を渡されたんだろう……

日本は現在、東京と大阪を中心に世界樹の木が聳え立っている。そして、少しずつ範囲を広げている。つい先日には北海道でもその片鱗はみえた。おそらく今度は北海道にも、東京と大阪クラスの天にまで聳え立つような、忌々しい巨大樹が現れる可能性が非常に高いと、うちのマッドサイエンティスト達が、言っているからそうなんだろう。

だがもっとヤバいのは他国だ。中国に関しては、タコの足の様にうねうねと猛スピードで範囲を拡大しているらしい……


まーあれは中国政府がミサイルやらで刺激しまくったせいと、いわれている。

そして、もう北京は完全に飲み込まれたと、最近になって知った。この事件はまだ一般には知らされていない。パニックになるからと上からの指示だ。SNSがまだ復活できない現在、隠し事は簡単になったようだ。皮肉なことに……


「それではここで1曲……」


災害前に流行った曲が流れ始める。


「そろそろお時間となってしまいました。温かい格好で身体を第一に! それではみなさんまた次回。」



 終わってしまった。僕が帰宅した後唯一の楽しみが……


今回もゼノの件、そして能力者の件については一切なかった。それどころか世界情勢も……。何故ならラジオで流れている情報は誤りで、実際世の中はどんどん悪い方向に向かっているのだから。




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