第50話 いつも通り
目覚まし時計が突然、私を眠りの底からたたきだした。昨日は遅くなったとはいえ、日付が変わる前には自分の部屋に帰れたし、床に着くことにも出来たので、身体は絶好調だ。洗面所に向かい朝の身支度を整え、いつもと同じように出社する。
「おはようございます」
戦闘係の部屋のドアを開けたタイミングで挨拶をする。いつも通り
「やあ、おはようございます。トガ君、昨日は有難うね!」
そして、必ず挨拶を返してくれるキラさん。この光景もいつも通り
というかキラさん……帰りたいだの仕事したくないだの言っている割には、誰よりも早く来ている。わけがわからないよ……
「お、おはようございます! ショウさん!」
キラさんに続き、少し恥ずかしそうに挨拶を返す一凛の花、ミナさんだ!
「ミナさん! もう、身体の方は大丈夫なのですか?」
「はい! 私は特にケガとかしていませんので、まあちょっと検査しただけで……」
ミナさんが言葉を濁した様に感じた……
「まさか! アオバさんに何かされた!?」
「いえ、そんなことはないですよ。……たぶん」
「う~ん、大丈夫かなぁ」
僕はあのサイコパス研究員のことが信じられなかった。
たぶん良い人なんだろうけど……
「そういえば、ハイノメ君はまだ来れないの?」
ちらっと時計を見たキラさんが、ミナさんに問いかける。
「いえ、私と同じく今日から普通に出社できるはずなんですけど……」
「あらら~、退院祝いで何か二人におごってあげようかなと思ってたんだけど……」
「そんな~、ユミさ~ん何初日から遅刻しているんですか!」
ミナさんは天に向かって怒りをぶつけた。
「いや、ごめんね。冗談だよ…… そもそも今の世の中飲食店なんてやってないんだし」
ミナさんの冷たい視線がキラさんのハートにブスブスと突き刺している。
「ご、ごめんね! そんなに怒らなくても、復興が進んでお店とかできたら皆で飲みに行こう。そん時は奢るから……」
「約束ですよ!」
彼女はちょっとだけ不服そうな顔で言い残し、仕事に戻った。
そして、何か楽しいことでも想像したのか少しだけ微笑んだ。
「おっはよーございます」
小学生のテンションで元気よく挨拶で部屋を開けた彼女
もう、お昼過ぎだ……
「ハイノメ君、今何時だと思っているの? 午後出勤? 聞いてないよ」
キラさんがここまで圧をかけるとは……ハイノメも遅刻とは珍しい。
「……すみません、寝坊しました」
「正直でよろしいです。まあ、君が寝坊するなんて珍しいじゃないか」
「朝起きた瞬間絶望しました」
「まあ、もうお昼過ぎているんだけどね」
何はともあれこれでみんな揃った。
いつもと同じ光景だ。
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