第52話 話題
「おはよ! ねえねえ昨日のツガルのラジオ聴いた?」
朝の挨拶変わりにハイノメが僕に聞いてきた。
彼女はもうすっかり元気になっていた。
「ああ、聴いてたよ。ハイノメも聴いているんだ」
「まあ、家……ていうか部屋に帰っても何もすることもないしね。あんたと同じでテキトーに流しているわ。同じような内容ばかりだけど……」
「仕方ないさ こんな状態でネタ探しとかできないし」
「あと、変なことも言えないしね。例えば、化け物がいることとか」
ハイノメは嫌味ったらしく、僕に遠回しに訴えるように聞いてきた。
「どうやら不満があるようで」
「あったり前よ! もういい加減ゼノのことについて政府はちゃんと国民に伝えるべきだと思う。風の噂でどんどん広まっているし。」
「それは僕も思うさ……前に事件現場に行ったらおばさんに、『化け物のしわざですか?』って聞かれたよ。」
「で、どう答えたの?」
「いえ、そのようなものはいませんよ!と」
「で、結果は?!」
ニヤニヤしながらハイノメが聞いてくる。僕は呆れながら聞いた。
「化け物の仕業でした!」
「ありゃ~」
「おはよう皆! 最近冷えてきたねぇ~」
ドアをゆっくりと開けながら、上司のキラさんが入ってきた。
「あ、来ましたね! 遅刻ですよ!」
ハイノメが待ってましたと言わんばかりに、椅子から立ち上がり、キラさんに対して、小学生が先生に対して注意する感じで訴えてきた。
「いや、別の仕事で遅くなっただけだから、支部長と話してたから。何なら君より早く仕事始めてたから!」
キラさんの言葉には珍しく、怒りの感情が篭っていた。
「へ、へぇ~ そういうことは早めに言ってくださいよね」
すごくツンツンしてる……
「いや、私上司なんだけど……」
今のキラさんに上司の威厳は微塵も感じられなかった。
このままではまずいような気がしたので、僕は話題を変えるため、キラさんに今日の仕事内容について聞くことにした。
「キ、キラさん……支部長と何か打ち合わせをされていたのですか。この後の仕事の内容ですか?」
「おお! そうそう、ハイノメ君とトガ君、ユズキ君の三人でこの仕事を任せたいんだ。どうせハイノメ君は書類仕事も終わって暇なんでしょ」
「な、なんですって! そうです暇です!」
「ユ……ユミさん」
隣でミナさんが引いている……
「そういう訳でお願いしますね。僕はいつも通り、有事の際の最終兵器としてここに残っていますので」
「まーた さぼるつもりですか! 最近私たちばかり出動しているじゃないですか」
ハイノメはキラさんに文句を言い始めた。何だろうハイノメがここまで突っかかるのは珍しい……
「まあ、若い子には旅をさせろっていうじゃない」
「……畏まりました。仕事内容の資料などありましたらいただいてもよろしいでしょうか」
ハイノメはキラさんから資料を受け取ると、部屋を後にした。
「ねぇ、ショウくん。最近ユミさん変じゃないですか?」
「そうだね、ここんところずっとカリカリしている気がする」
ミナさんも気付いていたようだ。そう、ハイノメはここ最近ずっとイライラしている。何かあったのだろうか?
「トガ君、ちょっといいかな?」
ハイノメが部屋から出てすぐに、キラさんは男性トイレに僕を呼び出した。
もちろん連れションではない。
「ハイノメ君についてどう思う?」
やはり、キラさんも解っていたんだ。僕も最近のハイノメはおかしいとキラさんにお伝えした。キラさんもうんうんと頷いた。
「何なんでしょうか……」
「それはあれだよ……」
!!!
「まさか! 知っているのですか!」
ぼくは思わず大声を放ってしまった。
なんだ、原因が分かっているなら。何とかなりそうだ。
「いったいなんなのですか?」
「そりゃあれだよ、 生理だよ……」
「はい?」
「生理! 女性が周期的になるやつ!」
こ、この人は馬鹿にしているのか? 生理のことはわかる。そして、ハイノメがそんなことで苛立っていないこともわかる。
「いや~ユズキ君に聞くわけにもいかないしさ。ほら私たち男は生理の辛さわからないじゃん? 聞こうと思ったけど、なんかマズいと思ったんですよ」
あたりまえだ。セクハラで訴えられるぞ!
「あと、最近気づいたんだけどさ……。君とユズキ君あれかな~できちゃってるのかな♡ いや、急にユズキ君さ! 君に対して呼び方変わったじゃない! いやーお兄さん、わかっちゃったわけですよ」
「……戻りましょう」
「?」
「いいから戻りましょう。僕たちも準備出来次第現場に向かいます。」
キラさん……この前の研究所での戦闘カッコよかったのに。
おつりが全部消えて一文無しになってしまった。
「全く、わかりやすいですな。リア充爆発しろっ!」
「……」
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