第6章 花のない仕事
第46話 人手不足
カーテンの隙間から光がくさびのように差し込んでくる。
気持ちのいい朝だ。
僕は腕を伸ばし、まだ少し寝ぼけている頭を働かせるため、カーテンを開けて、朝日を全身に浴びた。気持ち的にはのんびりと過ごしたい気分だったが、そういう訳にはいかない。昨日ハイノメ達が帰っては来たが、まだ二人共、アオバさんの所で検査中だ。戻ってくるのはかなり遅くなるらしい……
つまり、世界樹対策課戦闘係にいるのは僕とキラさん二人だけ……
最高の朝日を浴びたのに気分はどんよりと曇っていた。別にキラさんのことが嫌いではない、ただ二人分の仕事がこちらにくるかもしれない。報告書とかそういった事務的なことは他の部署の方が手伝ってくださることもあるが、世界樹の化け物 ゼノ のこと、あと最近僕たちみたいな能力者による犯罪行為。それらの対処は僕たちを中心に対応している。
何が言いたいかというと、人手不足であるということだ。
まあ、求人票出してるわけじゃないし、そもそも能力者でしかも戦闘に向いているタイプじゃないとダメっていうのがなぁ……
海外とかだと、傭兵と契約して非能力者の対ゼノ部隊みたいなの作ってると、支部長が愚痴っていた。ここ日本だとそれは難しいらしい。なんとか自衛隊と協力してやってはいるが……
このままじゃねぇ…… てか、4人だけってどういう事よ
「おはようございます」
いつも通りの挨拶で対策課戦闘係の部屋に入り、自分のデスクに向かう。
いつもと違う事といえば、ミナさん達がいないことぐらいだろう。
彼女たちは前回の任務で敵からの攻撃を受けたため、研究所で治療を受けている。なので今この空間にいるのは、僕と上司のキラさんの二人だけ……と、思っていたのだが、一人この殺風景な部署に不釣り合いの子がいた。
「おお、トガ君おはよう! 昨日は夜遅くまで悪いね」
「いえ、自分は特に何もしてませんよ。あの……なんでここにユイちゃんが?」
この子の名前は、ソノメユイ 僕とアオバさんが向かった先の事件の被害者だ。ハツカメクミの能力によって、喉をやられしゃべれなくなってしまった。現在、驚くほど早い回復速度のおかげで、今はもう元気に走り回れるほどだ。後になって分かったことだが、この子も能力者だった。どうやら周りから生命エネルギー?を吸い取ってしまうらしい……。今は体の傷は癒えたので、能力は発動していないが、傷ついたらオートで発動してしまうらしい。
「ああ、この子ね! 研究所から預かってくれって言われたんだよ。この子の事は調べ尽くしたし、今はハイノメさんとユズキさんの治療、そしてゼノのサンプルと事件の犯人のことでもう大変らしい」
「それでうちに……」
「そう、おまえら暇だろ! と……」
何故か自信満々で事の経緯を教えてくれた。どこも人手不足らしい
「ユイちゃんも大変だね~ そうだなぁ 託児所みたいなの作った方がいいじゃないですか? と、支部長に訴えてみるか」
「今は無理だと思いますけど……」
「だよなぁ……」
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