第45話 友達

 研究所の中は日付が変わっているからか、ほとんど研究員はいなかった。この時間にもいる人は、余程の研究熱心の人だ。


 私の名前は カンダツバキ 今回の件で、もう身体はクタクタだ。


 早く床に着きたい……


「さあ、ユイちゃん! 明日もよろしくね! おやすみなさい」

「あの~幼い子をこんな夜遅くに連れまわすのはちょっと……」

「しょうがないじゃない! あの子、私にかなり懐いているもの! 夜中悪夢にうなされていてね、私が傍についていたのよ」

「えぇ! 何処か頭でもぶつけたのですか?」

「あんたは私を何だと思ってるのよ……上司よ……」

「それで、何故私を連れてきたのですか? この後すぐハイノメさん達が来られるのでは?」


私は疲れもあったからか、少し苛立ちを混ぜた口調でアオバさんに問いかけた。

私なんかより、攻撃を受けたハイノメさんと、能力を使って敵を倒したユズキさんに興味が行くはずだから。


「ねえ、あなたユズキちゃんに何かされた?」

「いえ、何も……」

「そう良かった。じゃあ彼女は能力を使ってどうだった?」

「……それは」


私は言葉に詰まった。今回の彼女の豹変については報告してないからだ。

このことを報告すれば、ユズキさんは今後どうなるのか? もしかしたら最悪、監禁されるかもしれない。あの人は努力家で優しく、仲間思いの良い人……

この目つきの悪くて不愛想な私にも優しく接してくれた人……


 どうするべきか……


アオバサユリ、この人はユズキさんの能力のことについて知っているのだろう。

おそらく、嘘をついてもばれる。


「沈黙が長いわね」

「……はい、彼女は能力で敵を制圧しましたが、その……かなり暴力的で」

「そう」

殺されそうになったことについては伝えなかった。

もしかしたら、この人は気付いているのかも知れないけど……


「友達思いなのね」


アオバさんは私に聞こえない程度にボソッと何かを呟き、ハイノメさん達をワクワクしながら待ち始めた。さっきまでのシリアスな雰囲気は吹っ飛んでいき、今私の目の前にいるのは、プレゼントを楽しみに待っている子供のようなテンションをしたイタイ人。


 「あら~、トガ君王子様みたいじゃない!」

「うるさいですね、とにかくユミさんをお願いしますね」

「はいはーい、ほらハイノメもいらっしゃ~い!」

「はやく終わらせてよね」

「じゃ、ツバキちゃん! また明日ね♡」


私はイライラしながら部屋を後にした。

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