第44話 疲れ
「お疲れ様、どうやら大変だったようですね」
車から降りると世界樹対策課の支部長と、上司のキラさんが迎えに来ていた。
私たちは、2人に仕事の報告と拘束している変態男を引き渡した。
少し経った後、入口からトガ君とアオバさんと……
「つ、つつ! 連れ子ぉぉぉ!」
「違います! ミナさん! 前回話した事件の被害者のユイちゃんですよ!」
私はほっと息をつく
「何を勘違いしたんですか! でも、よかった。何か事件に巻き込まれたと聞いたので」
「そうよ~トガ君ったら、ずーとソワソワしてたんだから」
「ちょ、ちょっと恥ずかしい事言わないでください!」
実家へもどったような気軽さを感じる。
そう感じた瞬間、私の身体は左右にふらふらと揺れ始め、伐採される木のように倒れた。でも、トガ君が地面にぶつかる寸前に受け止めてくれた。
「大丈夫ですか? ミナさん」
「は、はい!」
か、顔が近い! こんなみんながいる前で!
私は自分でもわかるほど顔を真っ赤にしていた。
「あら~お熱いこと!」
「アオバさん、ババア臭いです」
「ちょっと、カンダさん何言うの! それより研究所に戻るわよ!」
「え、私も行くのですか?」
「あったり前でしょ! 戦闘員二人はお疲れのようだからね。わたしも鬼じゃないわ! 明日にでもじっくりと今回の件について聞くつもり」
「あの……私も疲れて……時間ももう遅いですし……」
「さあ、出発~」
アオバさんはそう言って、ユイちゃんとカンダさんを引っ張って研究所へと向かっていった。
カンダさん……ドンマイ!
夕闇はとっくに夜の暗さに変わり、気付けば日付が変わっていた。
私はいつのまにか、トガさんの腕の中でぐっすりと眠ってしまっていた。
「お疲れ様、ミナさん」
「あれ? 私には優しい言葉はないのかなぁ~」
「はいはい、ハイノメもお疲れ様」
「ちょ、私とミナの扱いの差!」
「冗談だよ、お疲れ様でした。身体の方は大丈夫なのか? 聞いた話だと敵から攻撃を受けたって……」
「そうなの、でも大丈夫そう! まあ、この後研究所に行って調べてもらうわ」
「アオバさんに気を付けてね」
「ええ、私だって早く寝たいし!」
「さて、皆さん! 今回の件お疲れさまでした。ハイノメさんとユズキさんはこの後、研究所に向かい身体に問題がないのか検査してください。万が一何かあると大変なので……トガ君、申し訳ありませんが、ユズキさんをそのまま行っていただけますかいただけますか?」
支部長は優しいトーンで各々に指示を出した。
「分かりました。僕は大丈夫ですよ」
「あ~私もお姫様抱っこしてもらいたいな~」
「お前は先輩として頑張って歩いてくれ」
「ちょっと、レディーに対して酷くない?」
トガさんとユミさんの楽しそうないつもの会話が暗い夜を明るく照らす。
「ゴホンッ! ハイノメ君……宜しければ、この私がお姫様抱っこしましょうか? まるで、少女マンガに出てくる王子様のようにね。さあ、ユミ姫お手を」
キラさんが手を差し伸べた瞬間、ハイノメはゴミを見るような目で断った。
「あ、結構です。セクハラで訴えますよ」
「……」
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