第22話 早起き

 次の日の朝、予定より早く起きてしまった。

早起きは三文の言うが、それは何かやることがあったらの話だ。いつもと違うことをやろうにも、この被災地には、最低限の生活ができる物しかない……


 散歩でもするか……


 川が近くにあるので、そこをパトロール感覚で散歩する。勿論、ゼノが現れたら 僕一人では対処できないので、川からはかなり離れて安全に散歩している。


 意外と早起きも悪くない


そう思えたときだ。ぼくはある少年と出会った。

その少年は、川をずっと見ていた……

まるで、魂が抜けたように


「どうしたんだい君?」

「……」


返答がなかった。少年は中学生ぐらいだろうか?背丈的に、多分にそうだろう……

「なあ、なにかあったのか? どうして君はここにいて……」

ぼくは、彼の顔を覗き込んだ。そこに映ったのは、この世の終わりでも見ているような顔だ……


 これはただ事じゃない


ぼくはイやな感じがしたので、急いで彼の腕を引っ張て、ここから立ち去ろうとした。  


が、  突如、川からサメのような怪物が勢いよく跳びかかってきた。

「おいおいおい、川まで数十メートルもあったはずなのに!」

映画ジョーズもびっくりの襲い方だ。


 こいつが、今回のゼノ 敵か……



「ごめんなさい ごめんなさいごめんなさい」

ぼくの横で 少年は一人小声でそうつぶやいていた……


 

 サメのような化け物は、猛スピードでこちらに向かってくる。まるで魚雷さながらの攻撃は、僕たちを丸のみにする気だ。それほどに、こいつの身体はでかい。


 逃げる余裕はない……どうする……


 僕一人なら、この数秒の時間で何とか回避できるだろう。だが、そんなことをしたらこの少年を見殺しにしてしまう。


「ええい、この!」

ぼくが選択した答えは少年を突き飛ばし、助ける。

それしか僕にできることはなかった。


 ん? その後どうなったって? もちろん、食べられた。




 怪物の体内は、ねちゃねちゃとしていて気持ち悪かった。サメの見た目をしているくせに生暖かく、血生臭い香りがする。何より、このぶよぶよとしたこの肉の壁が、生理的に受け付けない……


 ゴツン


何か固いものがぶつかったようだ。

化け物の体内は、狭くてうまく動けない……

なんだろう? なんとか腕を伸ばして、この触感の原因を探る。

 

 これは……毛だ……


ながいブロンドの髪の毛……

もっと奥へ腕を伸ばす。ぼくは固いものの正体がわかった。


 「あ、 ああ 助けて 怖いの……」

 「うわあああああ」


ぼくはおもわず声を荒げてしまった。

奥にあったのは、怪物の体内に取り込まれていく皮膚がただれた女性だった。

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