第3章 隅田川の怪物
第21話 初任務
僕たち新人二人の自己紹介が終わると、上司のキラさんが、手元にある資料を手に取り、僕たちにその内容を伝え始めた。
「早速だけど、これから任務にあたってもらうよ。場所は東京の隅田川付近だ。近くの避難民から、見たことのない巨大な生物を見た。という情報が入ったのでその調査だね。まあ、おそらくゼノだろう。気をつけて調査するように」
「キラさんは来られないのですか?」
ぼくは疑問に思い質問する。
「わたしは別の仕事があるからね。意外と忙しいんだよ。」
「よくあることよ。現地へは私たち3人でってことでしょ。」
ハイノメがやれやれ口調で返答した。
「すまないね。もうすでに自衛隊の方々が調査を開始している。君たちは何かあった時の戦闘及び、対象の捕獲ね。特にハイノメ君、気を付けてね。」
ハイノメが釘を刺されている。恐らく、サンプルを持って帰らないと研究チームにまた怒られるからだろう。
「では、諸君頑張ってくれたまえ、まあモンハンも捕獲の方がムズイけど、報酬もその分いいでしょ頑張ってね。」
仕事部屋を出て廊下を歩きだす三人組
「いよいよ、仕事なんですね……私不安です。」
「だ、大丈夫でしょ、なんとかなるって!」
だが内心不安だ。化け物に襲われる危険があるのはもちろん、もしかしたら、死んでしまうかもしれないから……
て、ぼく死なない身体になっていたんだった。
「そういえば、ハイノメ! 移動手段はどうするんだ。ここからだと結構距離あるけど……まさか歩いていくんじゃないだろうな。」
この問いにハイノメが自信満々に答える。
「ヘリよ、だからこれから屋上に向かうわ。」
対策課の屋上に出ると、そこに軍隊が使いそうなヘリが、出発の準備を完了させていた。
「凄いですね ヘリコプターを使うなんて! 私ヘリコプターに乗るの初めてです。」
「ぼくもだよ。」
「まだ 東京は災害の被害で歩くのが困難だからね。ドラゴン型の化け物がちょっと気になるけど、まあ、遭遇したら死ぬしかないわね。」
「おいおいおい、大丈夫かよ……」
ぼくの心配を無視して、ハイノメはヘリに乗る。
まあ、心配しても仕方ないか……
ぼくとミナさんは、不安を抱えつつヘリに乗った。
「さあ、出発~~」
ハイノメのこのテンションは何なんだよ……
生温かい風が、ここちよいぐらいそよそよと吹き渡ってる。
本当にこの隅田川の何処かで、巨大な化け物が住んでいるのだろうか?
「隅田川かぁ~ 花火大会の時しか来たことないけど。今年は無理そうね……」
「そうですね、何年後になるんでしょうか。災害の復興が終わったとしても、準備とかでもっと遅くなりそう。」
「おいお前ら! なにやってんだ!」
ネガティブ女子高生みたいな会話をしているこの女子2人。化け物、もしかしたら世界樹から生まれたゼノの可能性があるにも関わらず、この2人は呑気に釣りをしている。
「だって、釣れないんだもん」
「釣れないじゃねえ! ハイノメ! そんな市販の釣り竿で、釣れてたまるか! 周りをみろ! みんな網とか使って探してるじゃないか!」
「ええ、釣りじゃ捕まえられないのですか!?」
「ミナさん、あなたはもう帰りなさい! とにかく、僕達も他の人たちと一緒に参加しなくていいのか?」
何故なら、さっきからさぼっているようにしか見えないからだ。
「私たちは、もしもの時にちゃんと動けるようにしないといけないの! だから……これでよし!」
よし! じゃない
さっきから遠くにいる自衛隊の方々の目線が痛いんよ……
船の上で、ぼーと釣りをし始めて4時間以上経ってしまった。もう、太陽も隠れ始めている……。結局何の成果も得られず、時間だけが過ぎてしまった。
いや! 成果はあるぞ! と、二人は釣った魚を見せてきたが、肝心の化け物の手掛かりはなし、夜になると危険なので、今回の捜査は中止となった。
自衛隊の人たちは一度、各避難区に戻っていった。僕達は本部に戻らず、目撃情報の近くの避難区画に泊まることになった。区画の人たちは僕たちのことを、物珍しそうに見てくる。それもそうだろう、世界樹対策課の噂は、もうかなり広まっているらしい……。なので皆、どんな奴らなんだろう? と、興味津々だった。
「こちらのテントをお使いください。何かあったら気軽に申してください。」
自衛隊の方が親切に案内してくれた。
まさかこんなに早くテント生活をまたすることになるとは……
「昨日の夜と大違いだな……仕方ないけど。」
「あまりしゃべらないでね。私たち対策課が、ここの人たちよりもいい暮らしをしていることがばれたら、いったいどうなることやら……」
ハイノメがぼくにくぎを刺した。
まあ確かに、ぼくも対策課の人たちが、いい暮らしをしていることを知った時、不満の気持ちで一杯だった……
今では最高! と、自分もその待遇を得られたので喜んでいるが……
今 被災者の方々がこのことを知ったら 令和の魔女狩りみたいなことが、この日本で起きてもおかしくない。
「まあ、そんなに関わることはないだろうし、大丈夫だと思うけどね。そんじゃ! ショウ、ミナ 明日も早いし、おやすみ。」
ぼくたちは、それぞれのテントに入り、床に就いた。
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