第2章 世界樹対策課
第15話 休憩を…
歩き続けてもう昼ぐらいだろうか……
本当なら車などでもっと早く着けるのだが、災害の影響で道路がボコボコの状態のため、普通の車は使えない。
「ま、まだ付かないのですか? もう あ、足がパンパンになってきました。」
ミナさんが弱音を吐き始めた。確かに、もう4時間ぐらい歩き続けている。それにこのでこぼこ道で余計に疲れる。
「ショウさんは疲れてないのですか?」
ミナさんは何か僕に訴えかけるように聞いてきた。
そう言われても全く何ともない……
おそらくこの能力のおかげなんだろう。どうやら疲れ知らずの身体になっているようだ。でもここは空気を読んで
「そうですね、僕も疲れました。なあ、ハイノメ ここらへんでお昼休憩にしないか?」
「そうね、もう12時ぐらいだし、どこか楽にできる場所を探しましょう。」
「やったー もう私へとへとで……」
すっごく嬉しそうで何より
都心から離れ、災害の被害が落ち着いてきているとはいえ、ここら辺に休める場所があるだろうか?
「ありました! 公園です公園!」
ハイテンションで喜ぶミナさんの目線の先には、住宅街の真ん中にポツンとあるような ちっちゃい公園があった。
「そうね、あそこで一度休憩しましょう。」
ハイノメがそう言った瞬間、ミナさんは待ってました! と、言わんばかりに走って公園のブランコに座った。
なんだか……、最近ミナさんのキャラがよくわからない……
「落ち着いたらお腹が空いてきました。」
「そうね、お昼ごはんにしましょう。あ、悪いわねショウ! このブランコ2人までなんだ。」
いつの間にかハイノメもブランコに座っていた。別にブランコに乗りたいわけではない。子供じゃあるまいし……、
ぼくはブランコに座る彼女たちの前にたち、囲んである柵に腰を下ろす。
「さぁ、お弁当の中身はなーんだ!」
遠足の時の幼稚園生並みのテンションで、お弁当の蓋を開けるハイノメ、それを同じ気持ちで見守るミナさん。2人ともピクニックに来ているんじゃないんだぞと、ツッコみそうだった。お弁当の中身はおにぎりが数個と栄養機能食品だろうクラッカーがはいっていた。
「こ、これだけ……」
「あれま、いがいと少ないわね……」
「お、おまえらわざわざいただいたんだぞ。」
「じょーだんよ、いただきまーす。」
絶好のピクニック日和のお昼時、
お弁当を食べ終えた僕たちは旅の疲れをとっていた。
「おにぎり美味しかったですね!」
ミナさんもすっかり元気になたようだ。
「出来ればお酒が欲しかったとこですけど」
「えぇ! 昼間っから飲むの?」
隣で座っているハイノメがドン引きしている。ぼくもさすがにちょっと引いた。
ついボロが出てしまい焦ったのか、全力で言い訳をするミナさん、それをからかうハイノメ。
美女2人が仲睦まじい様子を見るのはとても目の保養になる。そう思いながら近くで見守っているのはいけない事だろうか。そんなことはない、地獄みたいなこの世界に天国のような平和な時間があってもいいじゃないか。
「そんなにお酒飲みたいの?」
「はい……なんだか昨日からずっとなんです。」
僕はこの言葉を聞いた瞬間、ミナさんの真っ赤に染まった姿を思い出した。もしかしたら……そのことと何か関係があるんじゃないのか?
「ミナちゃん……それって!」
ハイノメも気付いたようだ。
「アルコール依存症よ! つらい状況なのはわかるけど気を付けないと!」
「……」
期待外れだった。
「それよりユミさんのマスクってどうなっているんですか?」
ミナさんが話をそらそうと必死だ。でも、確かに気になる。昼食を食べるときもマスクを外さずに器用に食べていた。
気になる……
せっかく整ったきれいな顔をしているのに物騒なマスクで台無しだ。たぶん、煙の能力の性質上仕方ないんだろうが……
「せっかくきれいな顔しているのにもったいないです。」
よくぞ言ってくれました。ミナさん! 僕も言いたかったんだけど、気持ち悪いと思われたくなくて、言い出せなかった。
「え、えーと、これは能力の使用上仕方ないのよ!」
「能力?」
「そういえばまだ教えてなかったね。私の能力は……」
ハイノメはミナさんに煙の能力を自慢げに見せつける。なにか隠すような言い方だったのが少し引っ掛かる……
「そんなことできるのですか! 体から火を出せるなんて」
「そうなの! この大災害が世界各地で起き始めてから、私のような能力者が現れ始めたの。まだわからないことだらけで、何も説明できないけど、化け物が現れても大丈夫。大船に乗った気持ちでいて!」
まあ確かに、ハイノメは戦闘面で見れば頼りになる。実際銃で怯まなかった怪物が、ハイノメにかかれば一撃で倒せたわけだし
「頼もしいです!」
「えへへ、そうでしょ」
ハイノメは誇らしそうにしている。
「これで野宿することになっても簡単に火を起こせますね!」
「……あたしゃライター変わりか!」
ミナさんのボケにハイノメがツッコみをいれる。この二人、かなり気が合うんだろう。こんな世界じゃなければ、いい友達関係になっていたんだろう。
「さて、そろそろ行きますか!」
「えー、ユミさんもうちょっとゆっくりしましょうよ。」
「だめだめ、思っていたより全然進んでないんだから! しゃべりながらでも歩けるでしょ。」
そう言って駄々をこねるミナさんを立たせて、僕たちはまた歩き始めた。
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