第12話 二目惚れ

作者 武緒さつき♀


武尾さぬき先生の白と黒の聖女第12話

https://kakuyomu.jp/works/16817330655920324577/episodes/16817330656008317868


第12話 二目惚れ

 コンサドーレ様に案内されて私は、王国の紋章が入った馬車に乗っている。隣りにはコンサドーレ様ひとり。彼はシーラ様のお世話係なのかしら?


 少し癖のある深い青の髪、垂れ目の優しそうな表情……、街で見かけたどの男性よりもカッコいい。この人がいつもお傍にいるなんてシーラちゃんうらやましいな。私は思わず彼の横顔に見惚れていた。


 すると、彼は急にこちらを向いたので心臓が飛び跳ねそうになった。


「少し、お尋ねしてもよろしいですか?」


 彼はとても穏やかな口調でそう言った。


「はっ、はい。なんなりとどうぞ!」


 変に上擦った声が出てしまった。恥ずかしくて身体の内側から温度が上がっていくのを感じる。


「シーラ様と再会したのは先日の件からですか?」


「はい、そうです!」


 道が悪いのか、馬車が軽く跳ねた。身体が少し揺れて肩がコンサドーレ様にぶつかってしまう。


「ごっ、ごめんなさい!」


「いいえ、こちらこそ。お気になさらず」


 いけない。早く大神殿に着いて。この状況が続いたら私の心臓がもたない。もう熱で内側から破裂しそうになってる。


「シーラ様とはどんなお話を?」


「お話!? ええと、その……、話といっても義母さんと義姉さんとかの近況を教え合ったくらいでして……」


 シーラちゃんの掲げた両手の「×」が記憶を過ぎった。王立図書館の話はきっと私が知っていてはいけない話。


「そうですか、シーラ様がずいぶんと貴女に心を開いているようなので、秘訣があれば伺おうと思ったのですが」


 コンサドーレ様は正面を向いたまま、考え事をするように腕組みをした。


「本当にちょっとお話しただけなんです。シーラ様は顔がそっくりな双子の姉の私に思いもよらず再会して運命めいたものを感じたように仰っていまいたけど」


「王立図書館や宮廷の内部は、歳の近い女性があまりおりませんからね。話し相手を求めていたのかもしれません」


 彼は、今度は少し上を向いて難しい顔をしている。誰か話し相手になりそうな人がいるかを考えているのだろうか。


「あの……、シーラ様ってとても可愛らしいですよね? 昔とは別人のように変わって、なんていうか、もっと近寄りがたい雰囲気だと思っていましたので驚きました」


「きっと口の悪さに驚かれたことでしょう。彼女は王国の象徴ともいえるお方です。言葉使いに関しては、我々のイメージを損ないかねませんので、どうかご内密にお願い致します。」


 座したままの姿勢でまた頭を下げられた。こう丁寧に接せられると反応に困ってしまう。


 私が次の言葉を探していると、眼前に巨大なドーム状の建物が姿を見せていた。いつの間にか中央宮殿の近くまで来ていたようだ。


 心中があまり穏やかではなかったせいか、とても短い時間に感じられた。



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