【現実 二】

 私は、少年が家を同じくする少女と交流し、どうにも反りが合わないらしい別の同居人である少年の心を知ったシーンまで見終えると、一旦原稿を読むのを止めた。もうすぐ降りなければならない駅に近づいたためだった。

 電車に揺られながら、原稿を読み進めて、時折私は回想する。

 窓の外を見ると、懐かしい景色が広がっており、それらは通り過ぎる私を見送るように、どんどん後ろへ流れていった。

 そしてまた、私は最近会った男との会話を思い出していた――。



 ■■■


「お前から連絡くれるなんて、珍しいな」と笑った好青年風の男は、気安く私の肩を抱いた。

 最後に会ったのが高校卒業時だった筈なので、おおよそ十年若ぶりの再会である。

 私はやんわりと肩を抱く相手の掌を外すと、にこりと笑みを浮かべる。

 元警官である老人、和田との会合から一ヶ月後のことである。

 あの日は焼き尽くすように太陽が照り輝く日であったが、この日は爽やかな風が吹き抜け、木々の葉が赤や黄に色づく、ほんの少し肌寒い日だった。

 雲の隙間から柔らかく降り注ぐ太陽光の元、「なんだよ、つれねえなあ。折角表参道から態々来てやったのにぃ」と顔をにやけさせる男――修三へ、立ち話も何だから、と店へ案内する。

 待ち合わせ場所に指定した錦糸公園は、あの夏の日よりは賑わいを見せている。走り回る子ども、散歩する老夫婦、帰宅途中の学生に、営業回りの合間に休憩をとる会社員。私たちはその隙間をぬうように、すれ違う人々を避けながら、目的地に向かって歩いていく。

 暫くしてから、私は後ろから着いてくる修三を、ちらりと見やった。

 茶色に染めて少し傷んだ癖毛、日に焼けた小麦色の肌、甘くて柔和な顔立ち、がっしりとした体躯、すらりと伸びた背丈。

 学生の頃から何も変わらない同級生をひっそりと観察した後、すうっと視線をそらす。

 無意識の内に、歯を食い縛っていた。余計な負荷がかかり、きりきりと痛む歯と歯茎から、ゆっくりと力を抜く。

「どこ行くの」と、背後から能天気な声が聞こえてくる。私は、近くにファミレスがあるんだ。其処で話をしよう、と、言った。修三から異論は出なかった。

 私は一度も振り返らなかった。


 ■■■


 都内であるためか、はたまた駅前であるためか、私たちが入店したファミレスは案の定、混み合っている。私は店頭に設置されている順番待ち用の紙に名前を記入しようと近づくが、それより先に修三がするりと私を追い越して、さらさらと名前を書いてしまったものだから、中途半端な体勢で固まる羽目になった。

「それにしても、奢りって気前良いね。本当に良いの?」

 良いよ、と私は頷きながら、出入口付近に置かれた安いパイプ椅子に腰かける。修三は私の前に立ったまま、見下ろしている。少し不愉快だった。

「で、話って何? もしかして、結婚すんの?」

 にやにやと此方をからかうような、厭な視線を寄越す修三を、下方からじろりと睨みつける。

 しかし、この男は昔から他人が抱く不愉快な感情等に鈍感な性質を持つ人間であるので、私の剣呑とした視線を気にした様子はなかった。それどころか、私が苛々していることにすら気がついていないのかもしれない。

 席に案内されたら話す。あと、結婚の話じゃない。

 私は素っ気なくそう告げる。すると、修三は「勿体ぶらなくても良いじゃんかよォ」と、やはりにやついた声色でそう言ったあと、つんつんと肘で私の肩をつついた。鬱陶しかったのでそれには反応しなかった。

「二名でお越しの山田様。お席のご用意が出来ましたので、ご案内いたします」

 若い店員がきょろきょろと辺りを見回しながら、大きな声で客の名前を呼んでいる。

 勿論、私と修三の名字ではなかったので、私は視線を横にずらして、食事を楽しむ客を眺めていた。子ども連れの夫婦、恋人、友人同士の学生、老人、会社員。

 すると、修三が店員に近寄っていったので、私はぎょっとした。慌ててパイプ椅子から立ち上がり、彼を追いかける。

「山田様でございますか?」

「そうだよ」

 小首を傾げて訊ねる店員に、これまたにこやかに頷く修三へ、私は呆れてしまった。

 若い店員は、私の不審げな態度に気付いていないようで、「二名様、テーブル席へご案内です」とやはり大きな声を発しながら、奥の方へと進んで行ってしまった。

 山田さんって呼ばれたけど。

 私が憮然とした表情でそう囁くと、修三はにやっと笑って、囁き返した。

「ほら、俺って珍しい名前じゃん? だから、ファミレスとかで名前書くと、呼ばれるとき目立っちゃうんだよね。山田さんは、その為の偽名だよ」

 確かに、偽名を書いてはいけないという決まりはない。私としても、些か好都合な部分がなきにしもあらずなので、前を歩く能天気な男に非難の言葉を浴びせかけるのは止めた。

 案内されたのはボックス席で、見通しの悪い場所だった。他の客からも離れた処にあり、人通りも少ないようであった。

 店員が「注文がお決まりになりましたら、設置されてるボタンを押してください」と、やはり大きな声で話しながら、フォーク、スプーン、ナイフ等が入った籠と、氷で嵩ましされた水の入ったコップを置く。

 そのまま次の入店客の元へ足早に去っていたその後ろ姿から視線をそらした後、眼前の男へ戻すと、修三はランチメニューを開いて物色していた。

「高いの選んでもいい?」

 ……。

「冗談だよ、睨むなって。あーあ、昔から俺にアタリ強いよなあ、お前」

 気のせいでは?

 私はコップに口をつけると、ごくりと一口飲んだ。冷たく味のしないそれが、するすると喉を通りすぎていく。

 一方、修三は頬杖をつくと、男にしては大きな瞳を半分にして、むすっと唇を尖らせる。

「俺たち、長い付き合いじゃん。もうちょっと、昔のよしみで優しくしてくれても良くね? 子どもの頃とか、ほら、猫探したよな」

 私はカンッと高い音を鳴らして、コップを机に置く。

 修三の表情を凝視する。彼の顔に浮かぶのは、拗ねた感情だけだ。他には何もない。

 ……よく覚えてるな。

 私が漸く口に出来た言葉は、湿って重たく今にも地に落ちてしまいそうだった。たしかに修三の言う通り、昔、飼われていた猫を探したことがある。

「まあねえ。記憶力は良いから。で? ただ駄弁るために、幼馴染みに十年ぶりに連絡したわけじゃないだろ?」

 修三はそう言うと、同じくコップを掴んでぐいっと一気に呷った。ごくごくと水を飲み干すたびに、突き出た喉仏が上下していた。

 私はそれを黙ったまま眺めながら、修三の言葉を反芻していた。

 幼馴染み……。

 私は目的を思い出した。口を開く。出てきた音はからからに乾いていて、ひどく不快だった。

 うん。まあな。なあ、覚えてるか? 十年前に、近所で頻発してた放火のこと。

 カンッと、今度は修三がコップを叩きつけるようにして、高い音を鳴らした。

「何でまた、そんなこと」

 困惑と嫌悪がない交ぜになったような、奇妙な顔つきで私を見る修三を具に観察する。

 私は脚を組むと、記事を書く仕事を生業としていること、今度特集を組む題材に未解決である放火事件を取り扱うことを話した。

 修三は訝しげに表情を歪ませていたが、ぼつりと「そんな昔のことは、覚えてない」と呟いた。

 猫を探した話よりは、最近だけど。

 修三はじろりと私を睨みつける。今度はきちんと、私の嫌味が通じたようだった。だから私は、じっと彼の視線を受け止めた。

 やがて、修三は私から視線を転じると、再びメニュー表を眺め始めた。しかし、彼の意識があの十年前の放火事件に向いていることは、想像に難くなかった。

「お前だって被害に合った癖に、よくそんなもの調べる気になるよな」

 私はその言葉に瞳を瞬かせる。修三の言う通りだった。十年前、私の実家は燃えて、かなりの被害を出したのだった。

 仕事だからな、と私はつっけんどんな口調で返す。そう、私の実家が燃えようが、家族が離散しようが、私の目的には何ら関係がないのだ。

 一方、修三は私の頑なな態度に呆れたのか諦めたのか、定かではないものの、大きなため息を落とすとがっくりと項垂れた。

「お前ん家は兎も角、他の被害に合った家はせいぜい小火程度の出火だったよな」

 からからと氷だけが残ったコップをかき回しながら、修三が重たい口をとうとう開く。私は軽く頷いて、続きを促す。

「火元は?」

 私は和田への取材のために纏めた資料を、ショルダーバッグから引き抜いた。バラバラとめくり、目当ての書類を見つける。

 ――出火箇所に火気、それに連なる危険物等の発見なし。

 特定は出来ないものの、本来ならば火の気のない場所から出火しているということを告げると、修三は少し真面目な風に顔を引き締める。

「それって、結局、犯人の目星はつかなかったんだっけ?」

 未解決事件なんだから、そうなんじゃないか、と私はおざなりな返事をしつつ、更に書類を捲っていく。和田との会話記録にも、事件について調査した内容にも、連続放火事件の犯人についての記載は見当たらなかった。

 やはり、修三の言う通り、目星がつかないまま迷宮入りしたのだろうか。それか、的を絞るには些か心当たりのある人間が多すぎたのか。

 すると、修三は肩肘をついてぐっと身を乗り出すと、私の瞳の奥を覗くような体勢をとった。

 資料から視線を外し、かつての同級生と目を合わせる。

 艶の失った肌に、目元に少しだけ刻まれた皺を見ていると、私たちも年を取ったのだなあ、と柄にもなく感傷的な気分になった。

「なあ、お前は何から出火したと思う?」

 突然、そのようなことを訊ねた男を、私は訝しげに眺め回した。修三の質問の意図を図りかねた為である。

 何から、とは?

 私がぶっきらぼうにそう吐き捨てると、「察しが悪いな」と、修三が唇をひん曲げる。

 そして、乗り出していた身体を離すと、今度は座席に身を沈めるようにしてだらしなく寄りかかる。

「出火原因だよ」

 修三が呟く。私は顎をくっと少しだけ上に傾けて、話の続きを促す。

「出火原因から、犯人の特徴が絞れるかもよ?」

 出火箇所からは、火気及びそれに準ずる危険物等は発見されなかった。

 その為、不審火として事件化しているのだが、その出火原因――発火点が常温でも到達するものなり、引火点が極度に低いものなり、それが手に入れられるようなものであるならば、自ずと犯人の目星を付けることが出来るというわけだ。

 しかし、私は別に犯人を見つけたくて、態々話を聞いているのではなかった。

 私が知りたいのは、その放火魔が何故神崎夫妻の屋敷を全焼させるに至ったか、ということなのだ。

「いや、連続放火事件と強盗殺人事件は関連性が低い、って話じゃなかったっけ?」

 修三は私の考察に異を唱える。表情は強張り、険しい目つきで私を非難するように見つめている。

 私は和田と話したことを簡単に説明したあと、警察は疑っておらず、あくまで私がそう考えただけであることを伝える。すると、修三は少しだけ表情の柔らかくなった。修三を観察しつつ、私は長年疑問に思っていたことを、彼に訊ねた。

 何故、犯人は神崎家を全て燃やしたのでしょうね。

 修三はちらっと私へ視線を転じた後、すぐにそらして、自身の頭をぐしゃぐしゃとかき回した。

「それって、記事を書くのに大事なことなのか?」

 そうだなあ、と私はぼんやり間延びした声をあげながら、燃えゆく家屋と、その家族を想った。

 純粋に不思議なんだ。今まで小火騒ぎで済ませていた放火魔が、もしかしたら家族全員焼き殺していたかもしれないような大火事を起こしたのが。

 結局、神崎夫妻は火災が原因ではなく他殺体として発見されたわけだが、その子どもは助かったとはいえ外部からも内部からも生命の危機に陥っていたこととなる。

 私はピタッと修三へ視点を当てると、一言、何でだろうな? ともう一度、訊ねた。

 すると、一瞬、修三は不可解な表情を浮かべた。

 それから、「お前の言う通り、放火魔が事件に関係してたとすれば、だけど」と前置きする。

「どうせ、むしゃくしゃしたからだとか、魔が差してだとか、そんなくだらない理由じゃないか? それにしても、本当に許せないよなあ! 流石に殺人はしてないけど、他人の家に火を着けて回るって、人間として最低最悪だよ」

 しかし、私が瞬きをした間にその表情はすうっと消えてしまい、代わりに義憤に駆られたものを浮かべていた。

 私はつまらない修三の態度を一瞥した後、注文しないんですか? とだけ、訊ねた。

「んー、何か食欲無くなっちゃった」と力なく笑った修三は、突然真顔になると、「そういえば」と首を傾げた。

「出火箇所って、火の気のないところなんだよな。煙草の吸殻だろ? 案外、寝タバコじゃないけど、その家の人間の不始末とかだったら笑うよな。集団うっかり小火。なんちゃって」

 最後にぼそっと呟いた、死ぬほど面白くなくてむしろそのまま死んでほしい冗談に、私はひどく恐ろしい形相になったようだった。修三は顔を青くさせて小さな声で謝罪をすると、萎れた花のように項垂れた。

 私は残りの水を一息で飲み干した。温い感触が喉をゆっくりと通過していく感覚は、とても不快だった。

 それから、私は簡単に今年の夏にあった小説家焼身自殺の概要を話した。 

「ああ、錦糸町であった事件だっけ。この辺りだったよな。たしか、凄く燃えてたよなあ。ここら一帯、全部焼け落ちるかと思ったぜ」修三は厭に明るい声を出しながら、私へ感想を述べた。

 私はそれを聞いて、目を細めた。

「俺にこの話をしたってことは、もしかしてお前、この事件も関係あるって思ってるのか?」

 そうでなければこのような話はしないと思うのだが、ここで嫌味を吐き捨てても時間の浪費であるので、私は頷くだけに止まった。

 そして、私は以前から気になっていた事件発覚前、近隣住民の証言から件の小説家の家宅に訪問者がいた可能性を告げた。

 修三はそれを聞きながら、右手で顎を擦っている。

「ふうん、その小説家の家に、訪問者がいたかもしれない、ねえ。まあ、関係ないならとっとと出てきて捜査協力してるだろうけど、未だに名乗り上げないってことは……」

 何かしら後ろ暗いことがあるんだろうな、と私が修三の言葉を引き受けると、だろうねえ、と何処か投げ遣りな様子で、彼はため息混じりにそう言った。

「でもさ、こうも考えられねえ?」

 私は黙ったまま、目線だけで続きを促す。修三はピン、と右手の人差し指を立てると、自身の考えを述べた。

「実はその訪問者は、友人や恋人、家族……はいないんだっけ。兎に角、そういう親しい間柄じゃなくて、ある目的を持って尋ねてきた」

 ふむ、意外とまともな想像だった。

 修三は私が「目的って、何?」と訊ねてくることを期待していたようで、にこにこ笑いながら私を見ていたが、真一文字に唇を引き結んで一向に話さない私にがっかりしたように肩を落として、渋々話を再開する。

「ある目的とは何か? それは……強請だ」

 強請。

 私はすぅ、と瞳を細めた。まさか、ここでこの科白が出てくるとは思わなかったのだ。

 修三は立てた人差し指をくるくると回している。私は一挙手一投足、彼の動きを観察していたが、何か不審を抱くような行動は起こしていなかった。

 修三は言葉を続ける。

「何を強請っていたのか? もしお前が考える通り、昔起こった事件と関係あるならば、一つしかねえよな」

 小説家。強請。放火。自殺。

 おおよその想像がついた私だったが、敢えて修三に語らせることにする。私が更に続きを促すと、修三はそのよく回る口を滑らかにさせて、己の見解を告げた。

「その小説家が、十年前の放火犯で、強請ってる奴は何らかの理由でその小説家が放火犯だと知った。金が欲しかったのか、それとも小説家という他人とは違う奴を脅す快感が止められなかったのかは、わかんねえ。兎に角その強請ってた奴は、小説家を脅し続けた」

 有り得そうな話ではある。過去に犯罪まではいかなくとも、それなりに後ろ暗いことをして、償うこともなく生きていた人間が、ひょんなことから脚光を浴びて、人気者になる。聖人のように扱われる。最初はそれで良くても、やがて己の過去が嘲笑うように追いついてきて、償えと叫び、そしてそれは周囲の他人の言葉になる――。

 よくある話だ。誰もが有り得て、誰もが成り得る、つまらない話のひとつである。

 私は腕を組んだまま、つらつらとそのようなことを考えているうちに、修三の自説は佳境に入ったらしい。

 ダンッと力強くテーブルを叩いて拳を振り上げた男は、そのまま立ち上がると、大袈裟な身振り手振りで長々と続いていた論説を締め括る。

「そして強請を苦にして、小説家は生きたまま炎に焼かれて死んだ。これでどうよ!」

 私は首を横にふると、一言、話が飛躍しすぎだろう、と冷たく吐き捨てた。

 すると、修三も熱くなりすぎたことが理解わかったのか、大人しく席につくと、「ちぇ、良い案だと思ったんだけどなあ」とぼやいていた。

 だが、十年前の放火犯の正体が件の小説家という説は、正直興味深かった。そのため、私は修三にその説の論拠を訊ねてみると、彼は少しの間目を泳がせたあと、「ネットで見かけた噂を、自分なりに考えてみただけだよ」と笑った。

 私はそれ以上の追及を止めた。これは勘であったが、この場では修三は絶対に質問に答えないだろう、という確信があったのだ。

 修三は漸く注文する気分になったようで、ポチポチとタブレットでメニューを選んでは、買い物かごへ放り込んでいた。

 一方、私は再び手元の資料へ視線を落としていた。


【■■連続放火事件 記録書】

 聴取日時 二〇一二年■月

 聴取場所 ■■■■ 

 聴取者 ■■在住 近隣住民多数


 二〇一二年■月~■月に渡り、不審火の通報が相次ぐ。損害は何れも軽微に止まる。出火箇所に火気、それに連なる危険物等の発見なし。連続放火事件として捜査を開始。不審火の被害にあった家屋、建物等の範囲は第一被害者宅から全て半径一キロメートル以内の為、近隣住民による犯行の可能性あり。他、不審者の目撃情報が寄せられるものの、犯人の特定に至らず。以降、未解決事件となる。


【錦糸町小説家焼身自殺 記録書】

 発生日時 二〇一二年七月■日

 事件現場 東京都江東区■■■ー■■ー■ 


 被害者 りんさかくずは氏※本名不明、照会中


 二〇一二年七月■日未明、東京都江東区にて火災が発生。家屋全焼。焼け跡より、身元不明の死体を発見。現在居住中である小説家の躙逆崩破(本名不明)氏の行方が判明していないことから、身元不明の死体は躙逆氏の可能性あり。身元照会中。なお、躙逆崩破は筆名。警察は事故と事件の両方で捜査を開始しているが、出火箇所に火気及び危険物等が散見、また、死因は生きたまま焼かれたことによる全身の火傷であると推定(非公開情報)。警察は被害者の焼身自殺の線を視野に入れている。近隣住民の証言より、被害者宅に出入りしていた人物がいる可能性あり。


 そして、私は、矛盾を見つけた。 

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