エピローグ
ゆうべはお楽しみでしたねと、そんな感じの一言がお似合いだった夜が明けて幾許か。
季節のイベントでしかない日本のそれとは異なる、本来祝うべき
「で、そんなこんなでくっついたと。……まったく、大層な痴話喧嘩ですこと」
「いやーはい。まったくその通りで、へへっ」
こぢんまりとした和な部屋の中、こたつを挟んだ正面にいる少女──
そう、今日俺達を呼んだのは
正直めっちゃ気まずい。だって振った相手に一日で会うのって結構勇気いるんだよ? それもその後すぐに出来た彼女と一緒にとか何の罰ゲームって感じだよこれ。
「はーっ。せっかく振られたのを期待して招いたというのに、こうも惚気られてはたまりませんわ。……というか
「まあ成り行きで。はははっ」
「かっぴかぴ! 声も苦笑いも乾きすぎですわ!」
ごめんね
だって……ねえ? それはもう凄かったからねぇ? それはもう、とんでもないことにさ。
部屋はシャワー完備で、何でも緊急時のためにストックしているらしく飲食も豊富。
まさにヤるための場所。もしくは世紀末でも関係なしにいちゃつくための世界。もしかしたら、あそこに監禁エンドもあったかもしれないとすら思える充実空間。
そういうわけで、ほんともうぐっちょぐちょにされちった。宣言通り、男の俺も女の
いやーマジで一生分出し切った気がする。そんくらい極上の体験だった。
あ、ちなみに部屋から出てきた時にはもう学校はすっかり元通りに戻っていたよ。
何でも屋上に来た時に誰も入れないよう結界を張っていたらしく、そこにあった内部情報のバックアップを起こして空間ごと修復したらしい。ほんともうでたらめだね。
「……癪に障りますわ。どうしてこの
「おや嫉妬ですか?
「きぃー! この女狐! あー悔しいですわ! ですわですわですわー!」
子供相手に容赦なく勝ち誇る
そんな態度に何処から取り出したのか、白いハンカチを噛んで悶える小学生。何時の時代の出身よ。
しかしあれだね。犬猿の仲だと思っていたけど、実は結構相性良いよね二人とも。
結果がどうであろうと、普通自分を振った相手とその人が好きな人を次の日に呼ばないでしょうに。……まあ、
「……というか、そもそも高嶺さんが相手だって知ってたの?」
「当然ですわ。逆にあんな露骨で察しない鈍感なんて相当のど阿呆ですわよ?」
「……ど阿呆。ははっ、ははははっ」
「またしても!?」
だってぐさっと来たんだもん。この鈍感野郎って小学生にディスられたんだもん。
そうですよ。どうせ俺は最近まで自覚していない大うつけで、挙げ句自覚したらしたでやけくそヘラヘラムーブ始めた残念人間ですよ。へぼーん。
「落ち込まないでください。そんな残念な貴方が、私はどうしようもなく好きなのですから。はいあーん」
「た、
「アリスと呼べ」
「はいなアリスさん」
「あーもう! いちゃつかないでくださいまし! この浮かれポンチ共!」
みかんを口に放り込まれながら耳に響く、
あー酸っぱい。寝ちゃいそうな脳みそ君が活性化していく。うまうまー。
「で、小娘。私達を呼びつけた用事は何ですか。大した用件でないなら早々に帰って二回戦目に突入したいのですが」
「正確には
「今日はここでクリスマスパーティしますの。だからご招待ですわ」
「そうなんだ。……それにしては簡素だけど」
「だって実際は下の部屋でやりますもの。ここはあくまでお客様との談話室ですわ」
……なるほど、だから昔の俺はここに連れ込まれたんだね。また一つ賢くなったよ。
「どうするたか……アリスさん?」
「……ちなみに参加者は?」
「
そういえばそんな話もあったな。この兄妹が忙しかったり
相談しようと
俺次第かぁ。……まあ昨日散々イチャついたし、これはこれで楽しそうだからなぁ。
「じゃあ参加させてもらうよ。時間は? 何か手伝った方が良いことある?」
「まあ! でしたらしばらくここで寛いでくださいまし! 後で飾り付けでも手伝ってもらおうかしら!」
俺の参加表明にこの上なく嬉しそうに体を揺らす
そんなに嬉しいか。……嬉しいんだろうなぁ。俺も自分が企画したイベントに
「では
勢いよく立ち上がった
苺のストラップと部屋番号の付いた鍵。……ふむ、旅館かな? ていうか大事な物だよねこれ?
「……あ、そうだ
「え、……え?」
俺の返事を待たずして、
昨日のって……あれか。……やっぱり不屈の魂持ってるよね、あの娘。
「昨日の約束とは?」
「……ま、気にしなくて大丈夫だよ。どうせ果たされるのは別れた後の話だから」
「……なるほど。では心配いりませんね。どうせ果たされることのない約束です」
真顔で、当たり前のように、けれども自信を垣間見せながら微笑する
……なるほど。まったく、俺の周りの女ってのは眩しいくらいに強い奴なっかりだなぁ。
「……さて。ではこの空いた時間、何します?」
「ちょっと寝るよ。流石にちょっと休憩したいから」
「了解です。……残念」
流石に体力の限界だと、ゆっくり寝転がり目を閉じる。
何が残念なのかは置いておこう、うん。少なくとも、今日は夜まで勃たないかなぁって。
「ねえアリスさん」
「はい」
「好きだよ。殺したいくらいには」
「……知っています。そして私も愛してますよ、
いくらでも言い足りないその言葉を伝えながら、ゆっくりと微睡みへと落ちていく。
その最中、最後に感じたのは唇への優しい感触。紅茶が混ざりながらも、この数日のような一夜で覚えた、最愛の人の風味。
──ったく、叶わないなぁ。
まあこれからもよろしくね? 俺が殺したいほど愛してしまった、
────────────────────最後まで読んでくださった数少ない方々、本当にありがとうございます。
無事に最終話を迎えることが出来たのも、一重にお付き合いしてくださった方々のおかげだと思っています。
反省としましては、やはり途中で著しく読者が減ってしまった件ですかね。自身の実力不足を痛感するばかりで、どうにか次へと繋げていきたい部分でもあります。まあその辺りの話はこれくらいで。
最後になりましたが、感想や⭐︎⭐︎⭐︎、フォロー等をしていただけると今後の励みになります。作中で気になったことへの質問なども歓迎ですので是非気軽にどうぞ。
【完結】高嶺の勇者を殺したい! 〜ある日ステータスを見れるようになった俺は、隣の席で異世界帰りらしい高嶺の花に脳を焼かれてしまいました〜 わさび醤油 @sa98
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