飛行機
昼休みに屋上でお弁当を食べる。冬でも私たちは屋上で食べるのが好きなのだ。
食べ終わると、友達の真冬と一緒に学校の屋上で空を見上げている。冬の空は澄んでいて、冷たい空気がピリリと肌を刺すようだ。私たちの頭上には、ひとすじの飛行機雲が描かれている。真っ直ぐに伸びるその雲が、青い空に鮮やかなコントラストを作っていた。
「冬の方が飛行機雲が綺麗に見えるんだよ」
真冬が優しく教えてくれる。
確かに、寒い空気の中で飛行機雲がよりくっきりと浮かび上がるように見える。周りに雲も無く、真っ直ぐ飛行機雲だけが一直線に伸びている。
「寒いけど、いつまでも眺めてられる気がするな」
こうして屋上で空を見上げるのは、私たちの小さな楽しみの一つだ。冬の澄んだ空気の中で、飛行機雲が描かれていく様子を見ていると、時間がゆっくりと流れているような気がしてくる。
しばらく黙って空を見上げていると、真冬がふと悲しそうに呟いた。
「卒業したら、友達と会えなくなるのかな」
その言葉に、私は少し胸が痛んだ。
「遠くへ行くわけじゃないし、大丈夫だよ」
そう答えたけれど、私も心の奥で少し寂しい気分になってきた。高校で出会った友達との思い出が、頭の中で次々と蘇ってくる。
高校に入ったばかりの頃、私たちはまだお互いをよく知らず、少しぎこちない関係だった。けれど、部活動や授業を通じて、少しずつ心を開き合って、本当の友達になっていった気がする。文化祭で一緒に作ったクラスの出し物や、部活動での熱い戦いもあった。そして、何でもない放課後の時間、こうして空を見上げて語り合う瞬間も、大切な思い出の一つだ。
「高校を卒業しても、飛行機みたいに真っ直ぐ進みたいね」
そう、真冬が言った。
その言葉に、私も微笑んで頷いた。
「そうだね。私たちも飛行機雲みたいに、一直線に進んでいこう」
飛行機が空に描く真っ直ぐな線は、まるで私たちの未来を象徴しているように感じた。どんな困難があっても、まっすぐ前を向いて進んでいけば、きっと素晴らしい未来が待っている。
「飛行機っていいよね。ずっと真っ直ぐで」
私が言うと、真冬も「うん、私も好き」と答えた。
飛行機が描く空の線を見つめながら、私たちはこれからも互いに支え合いながら進んでいくことを心に誓った。
寒い冬の空の下で、飛行機雲が消えていくのを見送りながら、私たちはしばらく無言でその景色を眺めていた。そんな静かなひとときが、私たちの友情をさらに深めてくれる気がした。
この空はどこまでも続いているだろうけれども、私たちが見えるのはほんの一部。その先には何があるかは分からない。きっと安全な道を進んでいくんだろうけれども。未知というのは、希望も不安も兼ね備えている。
そうだとしても、青い空を進んでいこう。
澄んだ気持ちで、前を向いて歩んでいこう。
「私さ、真冬に会えて良かったよ! ここで見る飛行機、好きだよ!」
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