電話

 期末テストの時期がやってきた。

 いきなりやってくる冬とは違って、準備をしているべきなんだろうけれども。

 そうはいっても直前にならないと、準備なんて始めないんだよね。怠慢オブ怠慢です。


 そんなことを思いながら、夜中まで勉強をする羽目になっている。

 試験範囲すら、ちゃんと把握していない私にとって、期末試験は死角しかない……。


 こんな時に頼りになるのは、華子だけ。

 華子へメールを送ってみる。


「つかぬ事をお伺いしますが、試験の範囲を教えてもらいたく……」


 メールを送って帰ってくる間ってなんだかドキドキする。大したことない内容だとも思うけれども、どんな反応をされるのかなって怖い気持ちもある。怒られちゃわないかなって……。


 しばらく待ってもメールは返ってこないので、とりあえず最近授業でやった場所を中心に勉強を進めていく。

 もしかして華子は、私のメールに呆れちゃったのかな?


 先生が授業中、「テスト範囲について言うからメモしろー」って言ったのだけは覚えているけど、肝心のテスト範囲についてメモしていないのだ。

 とっても眠くて、手が動かなかったんだよね。


 自分に対して言い訳をしていると、華子からメールが返ってきた。


「数学のテスト範囲で言うと、43ページから125ページまでだよ!」


 端的に帰ってきた。私は嬉しくなって、すぐ返信する。


「さすが華子! シゴデキ!」


 可愛いスタンプも一緒に送ってお礼をする。一応華子は怒っていないようだと思う。

 教えてもらった範囲について、勉強を進めていく。



 ◇



 一つの教科だけ勉強していると飽きが来る。次の教科の勉強に映ろうと思ったが、またしても同じ問題が立ちはだかった。

 そうなのである。テスト範囲がやっぱりわからないのだ。


 申し訳ないけれども、また華子に聞いてみるしかないかな。私が頼れる唯一の友達。

 スマホに手をかけて、また聞こうと思ったけれども、先ほどのお礼メールに既読が付いていなかった。

 いつもだったらすぐに既読が付くのに。


 何となく嫌な予感がしたので、すぐに華子に電話をかけてみた。

 何か事件に巻き込まれていなければ良いのだけれども……。


「おー、どうしたの真由? 勉強進んだかい?」

「あ、良かった出てくれた! 華子、大丈夫? なんだか今日はメール既読ついて無くて心配になっちゃったよ!」


「あ、私? 真由と同じく勉強していたよ。まとまった時間があるときに集中して勉強しないとね!」

「大丈夫そうなら良かった!」


 なんでもない事だったけれども、華子の声を聞いたら安心した。


「声を聞けると安心する。電話ってやっぱり良いね。好きだな」

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