映画

「今度、紗季の家に行ってもいい?」と彼が聞いてきたから何も考えずに「オッケーだよー!」なんて答えてしまった。あの時の私は、ゲームで勝ってテンション上がり過ぎてたな……。


 今日、彼氏が私の家に初めて来る。朝からソワソワしていて、どうしたらいいのか分からない。部屋は普段から綺麗にしているつもりだけれど、念のために掃除を始めた。ホコリを払ったり、床を拭いたり、何度も確認する。掃除機をかけていると、玄関のチャイムが鳴った。


「来た……」


 心臓がドキドキしている。掃除機を急いで片付けて、玄関に向かう。いつも通っている廊下なのに、なんだか見慣れない景色にも見えてくる。今日はなんだか緊張してしまう。ドアを開けると、彼が笑顔で立っていた。


「こんにちは」

「こ、こんにちは」


 平成を装って返事したけれど、心の中では「どうしよう、何を話せばいいの?」と焦っていた。


 彼を部屋に案内し、二人でソファに座る。いつものように話せるかと思ったけれど、彼から「何をしようか?」という話題を振られて、沈黙が流れてしまった。気まずい空気が流れる中、頭の中でいろんな妄想が飛び交う。彼は私と一緒に来てくれて嬉しいのだろうか。何を話せばいいのか分からなくなってしまった。


 そんなことを考えながら沈黙を続けていると、彼から喋り始めた。


「映画を見るのはどうかな?」


 そう提案してくれた。その瞬間、私は心が軽くなった。映画なら二人で楽しく過ごせるし、話のネタにもなる。


「うん、映画見ようか」


 振り絞った声で答えた。テレビのリモコンを操作して、サブスクの画面を開く。その中から彼が選んだ映画は、私がずっと見たかったものだった。ポップコーンを用意して、リビングのソファに座って映画を観ることにした。


 画面が暗くなり、映画が始まると、少しずつ緊張が解けていった。彼と一緒に笑ったり、ドキドキしたり、一体感を感じることができた。映画が終わる頃には、いつものように自然に話せるようになっていた。


「やっぱり、映画っていいね」

「うん、楽しかったね」


 彼はそう言って微笑んでくれた。


 映画を見ながら過ごす時間が、私たちの距離を縮めてくれたように感じた。彼が帰った後、部屋に一人残って映画の余韻に浸りながら、今日は本当に素敵な一日だったと感じた。


 これからも、彼と一緒にたくさんの映画を見て、楽しい時間を過ごしていきたいな。この部屋で。


「サブスクに感謝だよ。私、映画好きで良かったよ。今度、違う映画見れるようにピックアップしておこうかな!」

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