ニッパー
「学校でプラモデル作るって、やっぱりオカシイと思うよ?」
「いやいや、梓。前々から言っているけれども、ただの『プラモデル』じゃないの。これは『ガンプラ』なの!」
そう言いながら、
夢衣には変なこだわりがあるみたいで、パーツがくっついていた部分――バリっていうらしいんだけれども、そこを眺めては唸っている。気に食わないようだったら、切り離されたパーツのバリ部分をさらに切っていく。そして、最終的にはその部分にやすりをかけるのだ。
そういう部分が残っていると、本物らしさがなくなってしまうらしい。たかがプラモデルと思ってしまうけれども、これこそが『ガンプラ』らしいのだ。
夢衣のフルネームは、
昼休みになると私の机に来て、プラモデルを作り始めちゃうんだもんなー。それも、毎日。
少し邪魔そうに眺めていても、夢衣は気にしない様子で続けていく。
「夢衣ちゃん。毎日毎日、プラモに夢中すぎるよー。何で私の席でやるの?」
「
いつもプラモデルの呼び方のことで怒られる。そんなに怒ることなのかは、いつまで経っても私には理解できないことだ。
「夢衣ちゃんは良くても、ゴミも散るし、掃除するの大変なんだよ? バリをギリギリまで切った時の小さいゴミとか……」
「そうそう、それね! なんと、私はそれを解決する手段を見つけたんだよ! いくよいくよ、見ててね!」
夢衣は嬉しそうに話し出したと思ったら、道具入れから見たことないニッパーを取り出した。そのニッパーでパーツを切り離すと、バリは飛んでいないように見えた。
そして、夢衣はニッパーの方を見えるようにしてくれた。そこには、切り取られたバリが付いていた。どうやら飛んでいかなかったらしい。
「どうどう、驚いた? このニッパーね、ちょっと高いんだけれども、バリが飛ばないんだよ! すごくない?」
そう言う夢衣はとても嬉しそうにニッパーを振って見せていた。さすがに刃物を振り回すのは危ないと思ったけれども、夢衣の嬉しそうな顔を見れたので私も楽しい気分になった。
「私、このニッパーが好きなんだ! 最強の『ガンプラ』道具だよ!」
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